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佐々木朗希「来年は“先発”という前提で話を…」ドジャース編成・敏腕フリードマンは“ロウキ”と何を話した? 悩める豪腕に“無謀な転向”を打診した理由
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAP/AFLO
posted2025/10/23 11:05
ナ・リーグ優勝のマウンドを託され、充実した表情を浮かべる佐々木朗希。スミス捕手とガッチリ握手
先発へのこだわりを明言していた佐々木にとって、即座に決断できるような簡単な話ではなかったことは容易に想像できる。“中継ぎは嫌だ”といったエゴではなく、大事な時期に初めての役割で貢献できるのかという不安は大きかったはずだ。それでも佐々木は最終的に“チーム、自分のためになるから”という理由でブルペン行きを決断する。
「来年は先発という前提で、どっちがいいかという話をされました。何も強制はなかった。ただ、チーム的には中継ぎの方がうれしいという感じで提案されたんです。すぐに返答しなかったんですけど、ポストシーズンも含めて経験出来ること、現実的に投げられることを考えて、中継ぎの方がチームのためにもなるし、自分としてもいろんな経験ができるのかなと思いました」
3Aでリリーフ初登板した9月中旬、そう語った佐々木の言葉からは複雑な思いが透けて見えてくるかのようだった。
WS連覇に貢献するビッグチャンス
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ただ、結果的に、ここでの英断はドジャース、佐々木自身の両方に最善の結果を生み出すことになる。佐々木は当初「自分にはリリーフの適性があるとは思わない」と語っていたが、実際には速球、スプリットという2つの支配的な球種を持つ右腕は短いイニングの切り札役に最高のハマり具合を見せた。
そして、ドジャースのほうも、佐々木がブルペンに加わっていなければここまでスムーズにワールドシリーズに到達できなかったはずだ。ブルペンがほとんど崩壊し、フレッシュな存在を熱望していたチームの中で、徐々にコンディションが整いはじめていた豪腕は何よりも必要な終盤イニングの武器となったのである。
「彼は本当にとんでもない才能の持ち主だ。ここまでやっても驚きはない」
フリードマン編成本部長はそう話していたが、佐々木をブルペンで開花させるには9月は時期的にギリギリのタイミングだった。
多くが計算通りだった中で、タイミングの良さと判断力が合わさってシーズン終盤にもたらされた壮大なパズルの“最後のピース”。このまま2年連続世界一を成し遂げたとすれば、新クローザー誕生に向けて動き出したドジャースと佐々木の決断は重要なエピソードとして語られ続けるに違いない。〈前編から続く〉



