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「大学時代はイップスで…」早大を大学駅伝3冠に導いた元主将・八木勇樹が説く“走る前にアタマを整える”方法
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佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO / Asami Enomoto
posted2025/10/23 10:01
左は早稲田大学3年時の箱根駅伝で区間2位で走って総合優勝に貢献したときの勇姿。現在(右)は少しお腹を気にしつつも、ランナーのサポートに精力的に活動している
「うちは、どのレベルの人も良いフォーム作りや地面反力をもらうためのドリルをしっかりやっています。走れる人でも意外と出来ていないんですよ。力で走っていると大腿四頭筋が大きくなりますが、これができるようになるとフォームが整って体型が細くなり、どこにそんな走れる力があるのって感じになります」
走る練習だけではなく、ドリルや地味な補強などに取り組むことでPB更新の可能性が高まり、取り組んできた“点”が“線”になって速くなるという。
練習会では、ペーサーをあえてつけず、グループに任せているが、これも走力アップに繋がるという考えだ。
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「一般的なチームの練習会ではペーサーをつけてカチッとハメて走る練習が多いですし、それをひとつの価値としています。でも、時には自分が引っ張ったり、違う人が引っ張ってペースをひとつにまとめないやり方も僕はいい練習になると考えています。市民ランナーは勝負レースの機会が少ないですが、ペース変動に強い人は、タイム狙いでも結果を残せると思うので」
追い込むことのリスク
普通の市民ランナーは仕事とランニングを両立しつつ、走る時間を捻出している。目標を達成して先を目指すと、自然と練習量、負荷を増やして追い込んでいく傾向にある。そこに、あるリスクが隠れている。
「僕は大学や実業団でマックスまで追い込んで練習していましたが、それだといい時はいいけど、コンディションを維持できないんです。また、レースに向けて、今どの状況にあるべきかを考えず、その時々で一番いい練習をしていく。それは一見、良いことのように思えますが実はその場限りになり、先に繋がっていないんです。市民ランナーも練習で一喜一憂しがちですが、目先の練習しか見ていなかったり、自分の状態を分かっていないからそうなってしまうんです。速く走りたいがために負荷をかけた練習を続けて追い込んでいくと、怪我のリスクが高まります。そうなる前に僕は練習を止めたり、休むことを伝えるようにしています」
体が疲労した状態で練習をしても100%消化できず、その結果、気持ち的に落ち込んだり、怪我に繋がったりする。体を休めることはもちろん、次の練習に心身ともにフレッシュな状態で臨むためには、休息は欠かせない。

