Sports Graphic NumberBACK NUMBER

《PB達成の心強いパートナー》藤原岳久が語るアシックス「GEL-KAYANO 32 」の進化のポイント

posted2025/10/23 10:00

 
《PB達成の心強いパートナー》藤原岳久が語るアシックス「GEL-KAYANO 32 」の進化のポイント<Number Web> photograph by Hirofumi Kamaya

スタビリティ系ランニングシューズの代名詞、アシックス「GEL-KAYANO 32」

text by

神津文人

神津文人Fumihito Kouzu

PROFILE

photograph by

Hirofumi Kamaya

アシックス「GEL-KAYANO(ゲルカヤノ)」シリーズの最新モデル「GEL-KAYANO 32」はさまざまなランナーのPB(プライベートベスト)達成をどうサポートしてくれるのか。超ロングセラーモデルの特長をシューズアドバイザーの藤原岳久氏が解説する。

 アシックスの「GEL-KAYANO」シリーズは、長時間走り続けるランナーのスムーズな足運びを支えるサポート性の高さに定評があり、多くのランナーをフルマラソン完走に導いてきた。スタビリティ、つまり安定性に優れたシューズの代名詞的存在でもあるのだが、そもそもランニングシューズの安定性とはどういうものなのだろうか。

「着地時にかかとが過度に内側に倒れ込むランニング挙動のことをオーバープロネーションと言います。プロネーション自体は着地の衝撃を分散するための人体の自然な動きなのですが、過度なプロネーションが長時間、長距離にわたって続くと脚の筋肉や膝にかかる負担が大きくなります」

 脚力が不十分でフォームが安定しないビギナーランナーはその傾向が強く、疲労でフォームが乱れてくるとプロネーションが強くなるランナーも多い。それゆえ、オーバープロネーションを抑制してくれる「GEL-KAYANO」シリーズが、世界中で愛されるロングセラーとなっているのだ。

「フカフカのハイクッションシューズは、着地衝撃こそ緩衝してくれますが、どうしても着地が不安定になる面があります。ですから、多くの人にとって、フルマラソンのような長い距離に初めて挑戦するというときは、GEL-KAYANOのような安定性に優れたシューズの方が適していると言えます」

安定性と快適性の両立を追求

 スポーツショップに足を運べば、安定性の高さを謳うシューズをいくつか見つけることができる。どれもオーバープロネーションを抑制してくれるものではあるが、その中にあって「GEL-KAYANO 32」の構造は非常にユニークだと藤原岳久氏は言う。

「オーバープロネーションを抑制する手法としては、硬いパーツを使って足の動きを制限する、押さえて固めるというスタイルが一般的で、一昔前のGEL-KAYANOもそうでした。しかし、『GEL-KAYANO 30』から継続して採用されている4D GUIDANCE SYSTEM(4Dガイダンスシステム)は、安定性と快適性の両立を追求したもの。スタビリティモデルにありがちな、硬さや窮屈さを感じません。特にアーチの部分に硬いパーツを搭載するのではなく、高反発フォームを採用してサポートするという発想はユニークですし、素材が高機能だからこそできるものだと思います」

 4D GUIDANCE SYSTEMとは、走行距離とともに変化するランナーの動きを研究して開発された機能構造。次に挙げる4つのポイントがある。

 ‌1つは広がりを持たせたミッドソール構造。内側のかかと部から中足部を広がりのある立体形状にすることで、走行時の過度な倒れ込みを抑制する。2つ目のポイントは、アーチ部に横に張り出すように配置された高反発でソフトなフォーム材。疲労時に必要になる安定性と、快適な履き心地を提供する。3つ目はかかと部の適切な傾斜。アシックススポーツ工学研究所が計測してきたランニング動作のデータに基づき設計されたかかとのカーブ形状がヒールコンタクト(かかとからの接地)時の前方への重心移動をスムーズなものにする。4つ目は接地面積を広げたアウターソール。靴底の接地面積を広くすることで、安定した足運びをサポートする。これらによって、オーバープロネーションを抑制しながら、心地よいライド感を追求している。

 前作からの大きなアップデートポイントは、ミッドソール前足部が約2mm厚くなったこと。ミッドソール全面に採用されているのは、FF BLAST PLUS(エフエフブラストプラス)という軽量で反発性に優れる素材だ。

「ミッドソール前足部が厚くなったことで、よりクッション性を感じられるシューズになったと思います。かかと部には前作同様、PureGEL(ピュアゲル)が内蔵されており、安定性を重視したモデルでありながら、ソフトさも感じられるシューズに仕上がっています。ドロップ(前足部とかかと部の高低差)は、10mmから8mmになりましたが、かかとから着地しても中足部で着地してもスムーズな前方への重心移動を促してくれる点は変わっていません」

軽量化は素材と技術の進化の証明

 シューズ重量はメンズ27cm(片足)で約300g(前作は約305g)、ウィメンズ25cm(片足)で約256g(前作は約270g) 。ミッドソール前足部の厚さが増していながら、軽量化にも成功している。

「そもそもこれだけミッドソールに厚さがあって、接地面積が広くとられているシューズは、一昔前だったら400gぐらいになりそうですよね。素材の進化、技術の進化を感じます。もちろん、軽さのために他を犠牲にしているわけではなく、ヒールカウンターはしっかりしていますし、アウターソールも耐摩耗性に優れたラバーがしっかりと採用されています」

 フルマラソン完走を目指すランナーにはもちろん、PB更新を目指すランナーのトレーニングシューズとしてもGEL-KAYANO 32は活用できるという。

「ゆっくりと距離を走るLSDトレーニングにとても適したシューズだと思います。5km、10kmのジョグだとそんなに安定性は必要ないというランナーでも、20km、30kmを走るときには『GEL-KAYANO 32』の高い安定性のありがたみを感じるはず。たとえば、ジョグでアシックスの『NOVABLAST』を履いているランナーも、長い距離用のシューズとして『GEL-KAYANO 32』を持っていると、トレーニングの質を上げることができるのではないかと思います」

 安定性と快適性を両立した「GEL-KAYANO 32」を上手く活用すれば、それぞれの目標達成を目指せるはずだ。

関連記事

ページトップ