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「すげえいい人だな…」“KIDに勝った男”金原正徳42歳が明かす不思議な縁「もし今、KIDさんがいたら」UFC出場、RIZINで再起…“戦い続けた格闘家”の告白
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長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2025/10/05 11:11
2009年大晦日の『Dynamite!!』で山本“KID”徳郁に勝利した金原正徳。だがその後、日本の格闘技界は「冬の時代」に突入する
デビューから引退まで一切の妥協なく強さを追求し、信念を貫いた金原だったが、2016年にUFCで不運な連敗を喫してリリースされたときは本気で引退を考えたという。
「心にぽっかり穴が開いてしまって、もうやめようと。自身のジムもあり、家族もいて、やめる理由はあった。最後にお世話になったDEEPで試合をして、そこで終わろうと考えていました」
所英男が言った「RIZINでもう一丁やりましょうよ!」
だが、格闘技に魅せられた男の闘志はなおもくすぶり続けていた。2017年にはキックボクシングに挑戦し、さらに翌年には桜庭和志が主催するグラップリングの大会『QUINTET』にも参戦する。組み技の楽しさを再発見した金原は思った。「もう 1回だけ、MMAをやりたい」と。
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「自分の死に場所というか、引退の着地点を探している段階だったので。最後にMMAをやるのなら、堀口恭司がいるRIZINのバンタム級がいいなと思ったんです」
新型コロナウイルスが猛威をふるいだす直前の2020年2月、金原のRIZINデビュー戦が組まれた。相手は、先のQUINTETで一本勝ちをしているビクター・ヘンリー。1ラウンドこそバックを奪って見せ場を作った金原だったが、身体にキレがなく動きに精彩を欠いた。2ラウンド早々に相手の右ストレートを被弾。ダウンしたところにパンチを受け、TKO負けを喫した。
当時、私はこの試合を見て「金原ほどの名選手が晩節を汚す必要はない」と率直に感じた。多くの若手が台頭しつつあったRIZINに、37歳の金原の居場所があるとも思えなかった。事実、この試合後、金原は引退を表明している。
「バンタム級は減量が無理でしたね。精神的にもきつかったです。減量をクリアしたら、それでもういいやと思ってしまった。アップしても身体は動かないし……。UFCのときは夢に向かって頑張れたけど、ただRIZINに出たいという目標だけでは無理でした」
フェザー級(65.8kg)で試合をしていた金原にとって、61kgでの試合は心身ともに負担が大きすぎた。しかし引退宣言から10カ月後の大晦日、盟友・所英男の一言が、金原をふたたび奮い立たせることになる。
2020年12月31日、所はレスリングからMMAに転向したリオ五輪銀メダリストの太田忍のデビュー戦の相手を務めた。27歳の超一流アスリートとの対決は、当然ながら、43歳の所が不利と見られていた。だが、結果は経験値に勝る所が腕十字で勝利。所と一緒に花道を歩き、セコンドについた金原は、試合後の控室でMMAへの再復帰を促された。
「RIZINでもう一丁やりましょうよ!」
金原の負けん気に火がついた。その場で復帰を決めたが、復活までの道のりは慎重を期すことにした。前戦の減量苦を踏まえ、堀口との対決は諦め、1階級上のフェザー級で試合をすること。また、持病の首のヘルニアの手術を受け、その経過を注視して現役続行の可否を決めること。
不惑を前にして、格闘家としての最後の勝負が幕を開けた。
<続く>


