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「信じられない形勢逆転」金原正徳vsYA-MANはなぜ“超RIZINの圧倒的ベストバウト”になったのか? 42歳で引退発表、試合後に見た「晴れ晴れとした表情」

posted2025/07/31 11:06

 
「信じられない形勢逆転」金原正徳vsYA-MANはなぜ“超RIZINの圧倒的ベストバウト”になったのか? 42歳で引退発表、試合後に見た「晴れ晴れとした表情」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

『超RIZIN.4』でベストバウト級の死闘を見せた金原正徳とYA-MAN

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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RIZIN FF Susumu Nagao

 全18試合の長丁場だった『超RIZIN.4』(7月27日、さいたまスーパーアリーナ)で、とりわけインパクトがあったのは金原正徳vsYA-MANのフェザー級マッチだ。いっそ“圧倒的ベストバウト”くらいのことを言ってもいいかもしれない。

昨年、周囲から引退を勧められたが…

 金原は42歳、プロキャリア20年のベテランだ。対するYA-MANはRISEでキックボクサーとして活躍し、一昨年にMMAデビューを果たした。MMA戦績は2勝2敗。層が厚いフェザー級の最前線で闘っての結果だ。RIZIN、RISEと連敗していたが、試合は常に真向勝負。観客を沸かせるファイターである。

 昨年のRIZIN大晦日大会でも、8連勝中の強豪カルシャガ・ダウトベックを相手に敗れはしたが打撃で前進を続ける健闘。この試合を見て、金原はYA-MANと闘いたいと思ったそうだ。

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 一昨年の9月、クレベル・コイケを下し4連勝を飾った金原は、昨年4月に鈴木千裕のフェザー級王座に挑戦。1ラウンドTKOで敗れ、今回はそれ以来のリングだった。

 ベテランがタイトルマッチで完敗すれば、誰もが“潮時”という言葉を思い浮かべる。周囲は引退を勧めたという。だが、当時は明かさなかったものの、金原は負傷を抱えていた。

「万全な状態でもう一回だけ試合を」という思いがどうしても残る。そんな中、互いにセコンドを務める盟友・所英男が7月に連敗脱出のKO勝利。刺激を受けないわけがなかった。

勝ったYA-MANもぶっ倒れた“死闘”

 周囲の反対を押し切り、最後の勝負と決めて臨んだYA-MAN戦。金原はYA-MANの打撃をかいくぐって組み付き、序盤からペースを奪う。1ラウンドはテイクダウンに成功するとヒジ打ち。2ラウンドにはフェイントでしゃがみ込んだYA-MANのアゴをヒザでカチ上げた。42歳、1年以上ぶりの試合とは思えないと言ったら失礼か。YA-MANが立ち上がってもしつこく崩し、マウントポジションを奪う場面もあった。

 だがこの猛攻で「追いすぎて疲れちゃった」と金原。最終3ラウンド、動きが落ちたところにYA-MANが凄まじい反撃を見せた。スタンドでのラッシュ。タックルは完璧にディフェンス。2ラウンドまでに相当なダメージを負っているはずなのに、信じられない形勢逆転だ。

「YA-MANは気持ちが強かった。僕のほうが先に心が折れてしまった」

 金原はそう振り返る。最後はタックルに合わせてのアッパーからパウンド連打。まさに死力を尽くして勝利したYA-MANは、試合が終わった瞬間にぶっ倒れた。リングになだれ込んだセコンドがバケツを用意する。

「全身の力が入らなくて。吐きそうだったんです。ここ(首)まで胃液が上がってきて」(YA-MAN)

 限界を超えたところで、YA-MANは格上の金原を下した。超がつくほどの“激闘”タイプであるYA-MANだが、キャリアの中でも最高の“死闘”だった。

【次ページ】 じつはスパーリング・パートナーでもあったYA-MAN

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