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“フェリス卒お嬢様タッグ”も結成…人気女子レスラー・桜井麻衣が“狂乱の貴婦人”から変化した理由とは?「意外と人の言葉をよく聞くタイプ(笑)」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/09/28 17:03
マリーゴールド看板タイトルの1つ、ユナイテッド・ナショナル(UN)王者の桜井麻衣
雪妃との“フェリスタッグ”「考え方が似ている」
ベルトの重みは、常に感じている。この夏のリーグ戦はブロック2位で敗退。決勝進出にあと1勝が足りなかった。準優勝だった去年との違いは、やはりベルトの有無ということになるのだろう。
「負けられないという気持ちに縛られたというか。誰が見ても、去年の私のほうがギラギラしていたと思います」
今の桜井は“ギラギラ”とは違う闘いを模索しているのだ。その中で、8月には地元の千葉県市川市で凱旋大会を行っている。ゲストに“貴婦人ポーズ”の考案者であり、よく相談に乗ってもらう元レスラーのひめかと、桜井が辛い時に支えてくれた大先輩、高橋奈七永を招き、試合では大学の先輩にあたる雪妃真矢と“フェリスタッグ”を結成した。久しぶりのタッグだが、桜井は今年2月の雪妃10周年興行に参戦してもいる。
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「凱旋大会の勝利者賞でジンギスカンのお食事券をいただいて、雪妃さんと初めてご飯に行ったんです。じっくり話してみると、考え方が似ているというか安心感がありましたね。やっぱり同じ場所で同じ教育を受けた人だなぁって。フェリスの教育理念は“For Others”。他者のために、他者との共存というキリスト教の教えで、授業で必ず習うんです」
桜井に近況を聞き、時に過去を振り返ってもらいながら感じたのは、まさに他者に感応する能力の高さだ。言い方を変えると、出会いに対して躊躇や照れがない。
「意外と人の言葉をよく聞くタイプなんです(笑)。プロレスラーの魅力って、強さとかどんな技を使うかだけではないんですよね。大事なのは周りの人たちとリング上でどんな関係性を作るか。お客さんもそこを見ていると思います」
「お湯に浸かったまま、6時間プロレスの話」
10月13日の後楽園ホール大会では、この大会で退団するMIRAIとタッグを組む。2人はマリーゴールドの初代タッグ王者で、DDMからの付き合い。よく一緒に練習したし、温泉に行って話し込んだこともある。
「お湯に浸かったまま、6時間ずっとプロレスの話をしてました」
MIRAIとのタッグとライバルヒストリーも、桜井が作った関係性の一つ。古巣であるスターダムのことが気にならないわけではないが、マリーゴールドと比較するつもりはないという。
「スターダムは大きい団体で選手層が厚くて、みんなキラキラしてますよね。一般の女性がプロレスラーに憧れるとしたらスターダムでしょう。ただ、今の私が目指しているのはお客さん1人ひとりの心に深く刺さるプロレス。人生に影響を与えてしまうようなレスラーになりたい。私自身、プロレスを見て人生が変わったので」
つまりファンそれぞれとの関係性だ。どこまでもまっすぐな性格まで含めて育ちの良さを感じる。“貴婦人”は単なるキャラではないのだ。


