- #1
- #2
オリンピックPRESSBACK NUMBER
「悩んでいた期間が足を引っ張っちゃったかな…」173cmの長身で“世界陸上でも注目”女子走高跳・高橋渚(25歳)が明かした「大舞台までの苦難」
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/09/24 11:02
セカンドベストとなる1m88cmの高さを3度目の試技で成功させた女子走高跳の高橋渚。今季は春先からスランプに苦しんだが、大舞台で力を発揮してみせた
世界との差が広がりつつあった同種目において、2022年から日本選手権3連覇を果たすなど、高橋は日本の第一人者になっていった。世界という舞台で戦うためのひとつの基準として、まずは記録を大台に乗せたいという思いは常にあったのだろう。
「跳べるだけの実力はあると思うんですけど……1m90cmが大台だという意識が問題で、それを取り払うのが難しいですね。海外でそういう高さをバンバン跳ぶ人たちに混ざった大会で、スッと跳んできちゃいたいと思っています」
そんな風に語っていた高橋のチャレンジが実を結んだのは、今年2月のことだった。
2月に1m92cmに成功…世界の決勝が視野に
ADVERTISEMENT
チェコで行われた室内競技会で1m92cmの跳躍に成功。実に39年ぶりとなる室内での日本最高記録をマークするとともに、日本人女子として実に12年ぶりの大台突破となった。結果的に、このジャンプで東京世界陸上の代表入りもグッと近づいた。
2022年のオレゴン世界陸上の決勝進出ラインは1m90cm、翌年のブダペスト世界陸上は1m89cm、昨夏のパリ五輪では1m92cm。それだけに高橋がここで1m92cmを跳んだ意味は限りなく大きかった。世界陸上に出られれば、決勝進出の可能性も現実的になってくるからだ。
高橋はもともと記録の安定感には定評があるジャンパーである。それだけに大台を一度跳ぶことができれば、その後も安定して跳ぶことができるのでは?――本人にも周りにも、そんな期待感があった。
「まずは屋外でもう一度1m90cm台の記録を跳ぶことですね。結局、1回だけだと再現性がないので。まぐれの一発だと思われないようにしたいです」
こうして地元・東京での世界陸上に向け、順風満帆に歩を進めていた高橋。その道に暗雲が立ち込め始めたのは、春シーズンに入ってからのことだった。
<次回へつづく>

