- #1
- #2
ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥の“エグい左”で「脳がグラッ」敗者アフマダリエフ「じつは5ラウンドの一撃で“異変”」世界的カメラマンがとらえた“心が折れる”決定的瞬間
text by

福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/09/20 11:12
井上尚弥はムロジョン・アフマダリエフをスピードとテクニックで圧倒。リングサイドで撮影した福田直樹氏が語る、「敗者の心が折れた」瞬間とは
井上尚弥が「相手の心を折った」瞬間とは?
5ラウンド、残り40秒くらいの場面で、井上選手のワンツーからの左フックがきれいに入ったシーンがありました。1、2、3ではなく、2のあとの3が0.3テンポくらい遅れてくる。つながっていないようでつながっている、井上選手の独特なコンビネーションのひとつです。おそらく「3」がくると思わせないような絶妙なタイミングなんでしょうね。連続写真で撮っていたのですが、試合を通じてアフマダリエフ選手が一番のけぞったパンチでした。あの左フックで脳がグラッと揺れたのか、頑丈な砦がいくらか“軟化”した印象があります。
そして6ラウンド、アフマダリエフ選手の連打をやり過ごしたあと、井上選手がすぐに左ボディ3発を含む6連打を返しましたね。あれも相当、強烈でした。特に左ボディはかなり効いていたと思います。あそこでアフマダリエフ選手の心がちょっと折れたんじゃないか、という気もします。せっかく攻めていたのに、それ以上に的確かつパワフルに打ち返されてしまいましたから。
個人的には、ワシル・ロマチェンコを思い出しました。ロマチェンコってちょっとでも変なパンチをもらったり、ガードの上からでも相手にいい感触を持たせたりしたときに、すぐにそれ以上のパンチを返すんですよ。絶対に相手を気分よくさせない。井上選手もロマチェンコのように気持ちを折りにいった。それを象徴するシーンが、あの6ラウンドの連打だったと思います。
<続く>


