「アフマダリエフだから倒れなかったですけど…」“最も拳を交えた男”が明かす井上尚弥の進化「何しに来たのかな…絶望感があった」怪物との練習 

「新しいスタイルではない」発言の真相は

一夜明け会見で、井上は「このスタイルを試合に向けて作り上げたという感覚はない。元々やれるスタイルで、それをチョイスして徹底した」と語った。その後も「新しいスタイルではない、いつでもできます！」と繰り返して、笑った。

――試合直後、井上選手は「引き出し」という言葉を使っていました。

「もっと動こうと思えば、動けたでしょうし。本人も言っているように、引き出しは本当にものすごくあるので、アフマダリエフに対しては今回ああいうスタイルで闘いましたけど、相手によっては全然違うこともできますよね」

井上の強烈なアッパーがアフマダリエフのアゴを捉えた瞬間　©Naoki Fukuda

ADVERTISEMENT

―――まだまだ引き出しはありそうですね。

「引退するまでに全部見られるのかなっていうくらいあります。その引き出しを開けないままで……」

――えっ、そこまでですか？

「出す必要がない引き出しもあると思うんですよ。これはやらない方がいいなとか、逆にもう階級を上げて危ないから、とか。昔、よくサウスポーにチェンジしていたときもあったんですけど、やっぱりスーパーバンタムに上がってからはあまり見なかったり」

井上はアフマダリエフの攻撃をことごとく封じた　©Hiroaki Finito Yamaguchi

――試合は練習の一部に過ぎない、と。

「結構、大橋ジムさんに行かせてもらっていたので、自分がやるだけではなく、井上選手と他の人とのスパーも見ていたんです。試合でこんな動き見たことないなとか、そういうシーンがたくさんありました。行かせてもらった大橋会長、指名してくれた井上選手に感謝ですね。まあ、そういった意味でも、体感していた今回のスタイルが見られて嬉しいです。もうああいう動きをしないのかなって、ちょっと思ったりしていたので」

――閉じたままの引き出しが、たくさんありそうですね。

「それこそ井上選手が引き出しを全部開けなきゃいけないような対戦相手と闘う試合を見てみたいですね」

【次ページ】　「何しに来たのかな…絶望感があった」