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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「アフマダリエフだから倒れなかったですけど…」“最も拳を交えた男”が明かす井上尚弥の進化「何しに来たのかな…絶望感があった」怪物との練習
text by

森合正範Masanori Moriai
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/09/19 11:05
圧倒的なボクシングでアフマダリエフをしりぞけた王者・井上尚弥
「何しに来たのかな…絶望感があった」
次戦は年末にサウジアラビア・リヤドでWBC1位のアラン・ピカソ(メキシコ)を相手に防衛戦を行う。来春、互いに順当に勝ち進めば、東京ドームで世界3階級制覇王者の中谷潤人(M.T)とのビッグマッチが計画されている。
――あの試合を見てしまうと、今後、対戦相手はよりやりづらくなりますよね。
「どっちで来るかわからない。それは混乱しますよね。自分もスパーでそうでしたが、両方のパターンを考えなきゃいけないんで。そうすると、よりドツボにハマってしまうというか。井上選手としては、じゃあ、相手がそっちに対応しているなら、こっちでいこうかなとか、こっちでより考えてきているなら、あっちでいこうかな、みたいな」
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――闘う前から井上選手が主導権を握っているような感覚ですね。
「そうですね。そういった意味でも今回の試合は大きいですね。アフマダリエフだったから倒れなかったですけど、フェザー級でも、あのボディで倒れる選手って出てくると思うし、重いとか切れるとかじゃなくて、とにかく痛いので。今回、井上選手は我慢しましたけど、後半に、ウワッと攻めることもできる。もちろん、アウトボクシングと攻撃的なスタイルのミックスもありますし」
――ちなみにですが、スパーリングに行くとき、井上選手がどういうスタイルで来ると想定していたんですか。
「想定というか、最初にお話ししたように、6-4くらいでアウトボクシングのほうが多かったんです。ただ『4』の時はものすごく攻撃力がある。でも、打ち合ってくれるので、その場に止まってくれるんですよ。たとえボコボコにされたとしても、クリーンヒットがなかったとしても、ガードの上からでもパンチが体に当たってくれる。だからスパーをやっている気にはなるんです」
――一方、アウトボクシングのときはいかがですか。
「アウトボクシングだけに徹底されたときは、『いやあ、きょうは何しに来たのかな……』ということもあったりするので、そっちのほうが絶望感がありましたね」
――これからの試合も楽しみですね。
「一ボクシングファンとして、井上選手の試合を見られるというのは、幸せなことですよね。だって、世界戦で倒す、倒さないの選択ができる、って普通あり得ない話ですよ。次はどういうボクシングでいくのかなという楽しみも増えましたね」


