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「負けたら体育館がガラガラになった」33歳柳田将洋が今も忘れない“男子バレー低迷期”の記憶「これからの選手は突出した武器が必要になる」 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph bySankei Shimbun

posted2025/09/22 11:05

「負けたら体育館がガラガラになった」33歳柳田将洋が今も忘れない“男子バレー低迷期”の記憶「これからの選手は突出した武器が必要になる」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

リオ五輪の出場権を逃し、ミックスゾーンで取材に応じる石川祐希と柳田将洋(2016年撮影)

 日本代表は当たり前のように「世界の頂点」という目標を掲げるようになった。先の世界選手権ではよもやの予選ラウンド敗退を喫したが、日本代表のユニフォームを身にまとう以上、歩みを止めることはできない。何より、歴史を紡いできた者たちも気持ち新たにバレーボール界を支えている。
 
 今年40歳になった永野健は指導者として今夏、ブラジルスーパーリーガのスザノ・ヴォレイに加入した。

「選手として、指導者として、いろんな選手を見てきましたけど、やっぱり自分に向き合って言い訳せず黙々とやってきた選手が上に行く。だから今の選手たちは振り返ることなんてしないで、先ばっかり見ていればいいですよ。選手が輝くための場が4年、8年、12年、16年後も続くように頑張るのが僕らの仕事なので。手を緩めずに。ずっと、見てあげられる存在でいたいですね」

 この春、現役を引退した41歳の米山裕太は裏方としてクラブに残った。9年前のロッカールームの慟哭がまるで幻のように感じるほどの穏やかな笑顔で、東レアローズ静岡のジュニアチームで指導に携わり、またスポンサー獲得に向け営業マンとしても奔走している。

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「元選手、元日本代表ということが意外と営業で役立つこともあるんですよ。今は日本代表も強いからお客さんとの話題に上がるし、石川キャプテンがメダルを目指しているチームです。自信に満ち溢れて戦っているのが画面越しにも伝わるし、確実に、世界との差は縮まっていると思います。僕もイチ応援団ですよ」

 昨シーズンはキャリア初の移籍を決断したウルフドッグス名古屋でベストセッターに輝いた35歳の深津英臣は、4年ぶりに日本代表復帰。Bチームの若手たちに混ざって、来たる日に向けた備えを始めている。

「ロス五輪に行けるチャンスがあるのは事実だから勝負したいですよね。オリンピック、出たいですから。以前は他のセッターとはあまりしゃべらなかったんですけど、今はいろんな選手の意見を聞いてアドバイスもして、それでも『負けねーよ』って気持ちを持ちながら。意見も手の内も全部さらけ出して、そのうえで試合に出られるように。いい関係性をつくりながら、ガツガツやっていきますよ」

 光が見えない時代でも諦めず、前を向き、踏ん張って歩み続けてきた人たちがいる。その意志がさまざまな形で今、この時に引き継がれてきた。

 ロス五輪に向けた物語を一瞬たりとも見逃したくはない。

〈全4回・完/第1回から読む〉

#1から読む
「本気でやれよ。お前らも、日本代表だろうが」石川祐希らを叱り続けた“鬼のリベロ”「永野さんはとにかく怖かった」男子バレー低迷期の葛藤
この連載の一覧を見る(#1〜4)

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