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「負けたら体育館がガラガラになった」33歳柳田将洋が今も忘れない“男子バレー低迷期”の記憶「これからの選手は突出した武器が必要になる」
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2025/09/22 11:05
リオ五輪の出場権を逃し、ミックスゾーンで取材に応じる石川祐希と柳田将洋(2016年撮影)
2018年、世界選手権に向けて柳田はセッター深津英臣に代わって主将に就任された。しかし、東京五輪では柳田に代わって石川祐希が主将に就任。急スピードで強化していくなか、柳田の立場も目まぐるしく変わった。
キャプテンでも、チームに必要とされなければコートに立てない。厳しい世界だからこそ尊い。日本代表のユニフォームにはそういう重みがある。柳田が東京五輪のメンバーから漏れたことは賛否を呼んだが、先人たちが繋いだものを受け取ってきたからこそ、柳田自身はそれをしっかりと受け止めた。
「(東京五輪は)選ばれると信じて頑張っていたけれど選ばれなかった。それを挫折と言うなら挫折だと思います。でも、落選には必ず理由があるし、活躍できなかった理由がある。実際に僕自身、何度も『ここで落ちたらどうしよう』と考えました。それぐらいギリギリの厳しい世界でやってきた、というプライドがあるから、その後に前を向くこともできた。選ばれた選手、日本代表に頑張ってほしい。それが本心でした。それ以上でもそれ以下でもないですよね。これからも僕は僕の場所でやるべきことをやるだけなので」
現役選手として初のJVA理事
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現在、東京グレートベアーズに所属する柳田は、今年6月に現役選手として初めて日本バレーボール協会の理事になった。協会運営の意思決定に携わり、会長や副会長といった役員と共に強化や普及、財務管理といった重要事項を審議、決定する役割を担う大きな役割だ。
また、プレーヤー目線を活かした解説業も好評で、さまざまな時代を生きた“証人”としてバレーボール界に新風を吹き込むことが期待されている。
常に先を見て行動してきた柳田は、“バレーボール戦国時代”を生きる未来の選手たちに期待を込める。
「川野(琢磨/早稲田大1年、東京グレートベアーズ)選手や一ノ瀬(漣/鎮西高2年)選手など、これから中心選手になるようなタレントはたくさんいますけど、何か一つプラスがあればいいぐらいじゃこれからはコートに立つことはできない。評価基準がどんどん高くなる中で、全体のアベレージを上げながら、突出した武器も持たないといけない。これからの日本バレーはそれぐらい高いレベルが求められていく時代だと思います」


