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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥に完敗「慌ててグローブを…アフマダリエフは不満げだった」英国人記者が目撃した“敗者の誤算”「イノウエがあの戦いをしたらナカタニでも勝てない」
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/09/17 11:04
井上尚弥に判定負けを喫したアフマダリエフ
イノウエは年末にはサウジアラビアでのアラン・ピカソとの試合が内定していると伝えられているし、来年にはおそらく東京ドームでジュント・ナカタニとのメガファイトが控えていると思われる。そういった重要な予定が詰まっているのであれば、これまで通りにアグレッシブな戦い方でアピールしたいと考える方が自然なこと。ただ、そんな予想に反し、聡明さとスピードを備えたイノウエは見事な適応を施してきた。
背景には、イノウエがMJを非常に高く評価しているという事実があったに違いない。MJはマーロン・タパレスに大番狂わせの形で敗れて一度はタイトルを失ったが、あの試合も大接戦だった。短いプロ経験で世界王座を獲得し、かつては統一王者でもあった。五輪、世界選手権で活躍するなど、アマ時代の実績も際立っている。
それほどの選手との対戦なのだから、イノウエがリスクを冒さず、より賢いボクシングを選択したのは驚きではない。MJが相手なら、より多くのダメージを与えることより、いかにダメージを少なくするかの方が重要だった。繰り返すが、誇張ではなくビューティフルなパフォーマンスであり、MJはほとんどのラウンドを失ってしまった。
アフマダリエフは明らかに沈んでいた
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完敗の理由としてもう一つ付け加えておくと、セミファイナルに登場したタケイ(武居由樹)の試合がKOで早く終わったこともMJには影響したという。おかげでメイン開始までの時間が早まり、ウォームアップの時間が十分取れなかったと感じていた。最終的には仕方ない面もあるが、慌ててグローブをつけなければいけなかったことは少し残念だったと言っていたし、不満もあったようだ。
もちろん、こういうことは起き得るし、条件はイノウエも同じ。私の意見を言えば、それで結果が変わったとは思わない。ただ、彼は元世界王者で、自分の思い通りのやり方で物事が進むことに慣れている。今回はさまざまなことが上手くいかず、私との試合翌日のインタビュー時も明らかに沈んだ様子が見て取れた。

