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井上尚弥に完敗「慌ててグローブを…アフマダリエフは不満げだった」英国人記者が目撃した“敗者の誤算”「イノウエがあの戦いをしたらナカタニでも勝てない」
posted2025/09/17 11:04
井上尚弥に判定負けを喫したアフマダリエフ
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Naoki Fukuda
◇◇◇
リングマガジンの編集人を務める英国人ライター、トム・グレイ氏は井上尚弥(大橋)に挑戦したWBA暫定王者ムロジョン・“MJ”・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と関係が深く、井上戦前後に2度の独占インタビューを行った。試合翌日の取材時、アフマダリエフが明かした敗因とは何だったのか。
そして、盤石の強さを見せた井上との対戦で勝機がある選手は誰なのか。来春の激突が期待される中谷潤人か、あるいはフェザー級の王者たちか。ベテランライターにじっくりと語ってもらった(以下、グレイ氏の一人語り)。
「イノウエが猛攻を仕掛けてくる」
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MJことアフマダリエフは長い時間をかけて準備をしてきた一戦でほとんど力を出せなかった。結局のところ、“イノウエに何もやらせてもらえなかった”という表現が適切だろう。
MJはリオ五輪で銅メダルを獲得したほどの選手だからもちろん攻撃力を持っているが、自ら前に出て攻め続けるのが得意な選手ではない。それよりも前に出てくる相手にカウンターを合わせる方が好き。最近のイノウエは少々強引に攻める傾向があったから、隙が生まれる可能性があると踏んでいたのだろう。ところが今回はその読みが外れ、イノウエに完璧に近いアウトボクシングをされてしまった。
私は試合前後、MJにインタビューする機会に恵まれ、試合翌日にもホテルのロビーでじっくりと話が聞けた。MJと彼のチームはやはりイノウエが最初から猛攻を仕掛けて来ると予想していたようだ。ルイス・ネリ戦、ラモン・カルデナス戦など不覚のダウンも喫した最近の試合を見ていたことで、そのように想定してしまったのだろう。

