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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「イノウエを囲む記者が多すぎて…」6年ぶり来日の英国人記者が“井上尚弥”を堪能した名古屋の夜「6000マイルかけて日本に来てよかった」
posted2025/09/17 11:03
試合後、会見に出席した井上尚弥
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Takuya Sugiyama
◇◇◇
世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)はWBA暫定王者ムロジョン・“MJ”・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との防衛戦でこれまでと違った強さをみせてくれた。9月14日、名古屋のIGアリーナで行われた一戦で、井上はアフマダリエフに大差の12回判定勝ち。「キャリア最大の強敵」をスピードとスキルで寄せ付けず、“完封”と呼べる勝利を飾った。“モンスター”はデビュー以来の連勝を31勝(27KO)に伸ばすとともに、持ち前のパワーと攻撃力だけでなく、その総合力を改めて印象付けたといっていい。
リングマガジンの編集人を務める英国人ライター、トム・グレイ氏はこの試合のために来日し、リングサイドから戦況を見守った。2019年のノニト・ドネア第1戦以来の井上取材となったベテランライターも、強さと賢さ、そして絶大な人気に改めて感銘を受けたようである(以下、グレイ氏の一人語り)。
用心深く、賢かった12ラウンド
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今回のイノウエのボクシングは本当にスペクタクルだったと思う。ほぼ完璧に近い試合をしたと言っていい。生粋のカウンターパンチャーであるMJに対し、用心深くボクシングをし、打つべき瞬間を賢く選び、ミスをしなかった。とにかくスピードが飛び抜けており、カウンターパンチャーにカウンターを取る機会を与えなかった。
ご存じの通り、イノウエは直近の4試合のうち2戦でダウンを喫していた。その4戦には本来の攻撃的な姿勢で臨んだが、MJとの試合ではアウトボクシングで私たちを魅了してくれた。戦略面まで含め、イノウエが素晴らしかったということだ。
イノウエは事前からKO勝ちにこだわらないことを公言していたが、それでもあそこまで徹底したアウトボクシングをしたことには少々驚かされた。彼がフルラウンドを戦うのは6年ぶりであり、他の相手はすべてKOしてきたのだから。

