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井上尚弥に完敗「慌ててグローブを…アフマダリエフは不満げだった」英国人記者が目撃した“敗者の誤算”「イノウエがあの戦いをしたらナカタニでも勝てない」
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/09/17 11:04
井上尚弥に判定負けを喫したアフマダリエフ
私たちはしばしば忘れてしまうが、ファンが見るのはリング上での36分間の姿だけだ。しかし、MJは数か月にわたってこの試合にすべてを捧げてきた。だから落胆しているのは当然。インタビューでは気丈に振る舞おうとしていたが、家族もチームもそこにいて、やはり少し落ち込んでいるのが分かった。
それでも最後、MJは「私は戻ってくる」とも言っていた。イノウエを相手に12ラウンドを戦い抜ける選手はそれほど多くはなく、彼の実力は証明されている。今回の試合で健康状態を損なったわけではなく、まだ30歳で時間はある。MJはこれから先もスーパーバンタム級でまたインパクトのある活躍ができると思う。
中谷潤人は井上尚弥にどう戦うのか?
井上の今後についての話もしておくと、MJとの試合で見せたようなスタイルで戦った場合、これから先もスーパーバンタム級ではなかなか負けることはないだろう。
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この階級で最大の脅威は、まもなく階級を上げてくるナカタニに違いない。だが、イノウエがスマートかつシャープな戦い方を選択したら、ナカタニでも攻略は難しい。勝機はイノウエが何らかのミスを犯した場合に限られるのではないか。
ナカタニはMJとは違って一発でダメージを与えるパンチ力を持っているし、イノウエもそれを分かっている。それでもトレーナーのルディ・ヘルナンデスとナカタニの準備を難しくさせるのは、直接対決の際、どのイノウエが出てくるのかがわからない点だ。前に出てくる攻撃的なイノウエに備える必要もあるし、今回見せたようなアウトボクシングの天才に備える必要もある。
私はナカタニがMJより優れたボクサーだと思ってはいるが、イノウエとの形勢を完全にひっくり返せるほどかと問われれば疑問だ。私は当初からナカタニ戦はイノウエが有利と見ていたが、今回でその予想にさらに自信を持った。
そうなると、イノウエに勝てるとすれば誰なのか、という話になる。


