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「バットはより長く、重く…」ドジャース・大谷翔平が今季見せている“打撃改革”とは…「構えが大事というのが僕の考え方です」3年連続MVPなるか 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byNanae Suzuki

posted2025/09/25 17:53

「バットはより長く、重く…」ドジャース・大谷翔平が今季見せている“打撃改革”とは…「構えが大事というのが僕の考え方です」3年連続MVPなるか<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

2年連続の50号本塁打を達成したドジャース・大谷翔平。3年連続MVPの偉業なるか…

「基本的には『低い打球』を打ちたいなと思っています。その方が(バットに)当たる面積は大きいですし、打球速度が速くなる。その分、ヒットになる確率も高くなるので。その上でパワーがあれば、より打球速度が出て、角度がなくてもホームラン、長打になる。上がったらホームランになるのは当然ですし、上がらなくてもホームランになるようにしっかり振っていくのは大事かなと」

 角度をつけることを狙うのでなく、確実にボールの芯を強く捉えるイメージ。そうした大谷の打撃感覚は、今年の球宴出場の際にはこんな言葉へと変わっていた。

「今までは二塁打だったような当たりが、フェンスに入るという想定で組み立てていくイメージですかね。今はある程度の角度でいい打球が上がれば、ある程度フェンスを越えるだろうという想定から逆算していくので、多少打席でのアプローチも変わってきているかなと思います」

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 ライナーで外野の間を抜く二塁打の延長が本塁打になるという意識から、今はボールの下にバットを入れ、最初から角度をつけることに主眼を置くアプローチに変わった。極端な表現をすれば、本塁打の打ち損じが安打になるというイメージだろう。より高度な技術で、より難しいアプローチを選択することができるほど、バッティングへの自信が深まっているようだ。

昨シーズンよりも重く、長くしたバットの効果

 大谷が重要視する打撃哲学と感覚。徹底的なこだわりを見せる部分がある一方で変化も恐れない。打者であれ、投手であれ、『これでいい』という終着駅は現役を続ける限りはない。超一流になればなるほどに、毎年技術にはアレンジを加え、新たな領域を目指そうとする。そんな姿勢を象徴するのが、今季を迎えるに当たって踏み切った、バットの変更だ。

 彼は2年前から米国チャンドラー社製のメープル素材のバットを使用している。素材が硬く、職人が手作業で仕上げる工程が多いことで知られ、言わば米国式と日本式のいいとこどりのツールだが、今季からは重さ、長さをともにアップした。

 重さは昨季の31.5オンス(約893g)から32オンス(約907g)へと約14gの増量をはかり、長さは昨季の34インチ(約86.4cm)から35インチ(約88.9cm)へと、約2.5cmの長尺化をはかった。

 一般的に重量と長さを増すことはともにバットの操作性を難しくする。その反面、バットヘッドが走り、スイングスピードが増すことで、打球速度と飛距離がアップするという利点がある。

 相反する難題に取り組む中で、彼はその日の体調、相手投手、球場環境などを考慮し、重さはどちらも32オンスだが、長さは35インチと34.5インチという2つのバットを使い分けている。

 そして8月31日現在、彼にはこんな数字が並んでいる。

 打席数に対するバレル(最も安打になりやすい打球角度と速度の組み合わせ)の割合は13.2%、平均打球速度94.8マイル(約152.5km)、最大飛距離448フィート(約136.5m)、打率.276、三振158。

 対して昨季は、バレル割合は14.1%、平均打球速度95.8マイル(約154.1km)、最大飛距離476フィート(約145.0m)、打率.310、三振162。まだ9月1日以降の25試合を残した時点のデータだが、数字は昨年を下回るものばかりだ。長さと重さを増したバットへの対応は、道半ばと受け取れる。

 この数値の変化を生んでいる背景について、もうひとつ気になることがある。昨秋のワールドシリーズ第2戦で左肩を脱臼したことだ。シリーズ終了後すぐに左肩の修復手術を受けたが、その際に気になる言葉を関係者から聞いた。

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