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「バットはより長く、重く…」ドジャース・大谷翔平が今季見せている“打撃改革”とは…「構えが大事というのが僕の考え方です」3年連続MVPなるか
posted2025/09/25 17:53
2年連続の50号本塁打を達成したドジャース・大谷翔平。3年連続MVPの偉業なるか…
text by

笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Nanae Suzuki
発売中のNumber1127号に掲載の[2025年の打撃改革]大谷翔平「3年連続MVPへ」より内容を一部抜粋してお届けします。
3年連続MVPなるか
2年連続、3度のMVPに輝く大谷翔平が、今季もナ・リーグ同賞の最有力候補に位置している。
8月31日を終え、得点、長打率、OPS、塁打数はいずれもリーグトップ。対抗馬とされるカイル・シュワバー(フィリーズ)に本塁打で4、打点では34離されてはいるが、MVP投票で最も有力な指標とされるWARでは、シュワバーの4.4に対し、大谷は打者として5.4、投手として0.2、トータル5.6をマーク。大きく引き離している。
仮に3年連続での受賞となれば、2001年から4年連続で受賞したバリー・ボンズ(ジャイアンツ)に次ぐ偉業となり、それは歴代トップに並び、抜き去る2026、'27シーズンへ向けての足掛りともなる。
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まさに今、大谷は野球界最高峰のMLBにおいて、現役最強打者として君臨している。
打者・大谷の凄みは昨季の54本塁打、59盗塁が示す通りパワーとスピードを持ち合わせていることだ。加えて2年連続での打率3割超えで確実性も証明した。3割打者は昨季両リーグを合わせ7人しかいなかった。その中で、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)とともに本塁打王を獲得しながら打率3割超えの難関をも突破したことは、『Complete Hitter』(完璧な打者)の証として大きく評価されている。
メジャー8年目も変わらぬポリシー
早いもので大谷もメジャー8年目を迎えた。経験、実績を積み重ね、逞しさは増すばかり。その飛躍の過程を辿ると、一貫して変わらないバッティングのポリシーが見えてくる。それは、打席での『構えとボールの見え方』へのこだわりだ。
「構えに入る前にしっかりと投手がいい角度で見えて、構えた時にも、踏み込んだ時にも同じように見える――。そういう時は、比較的打撃状態がいいと思います」
これは'21年3月のエンゼルス時代の言葉だが、ドジャース移籍後も同じ表現を繰り返している。
「打球の角度は、スイングの軌道で決まると思っている。その軌道は構えで決まっている。なので構えが大事だというのが、僕の考え方です。構えが決まれば、軌道もよくなるし、力の伝わるスイングになるというところですかね」
自身の感覚に頼る部分が多いと、なかなか構えが安定しない。そこで大谷は再現性を高めるために、昨季6月から新たなるルーティンを取り入れた。
打席に入ると、ホームプレートの捕手側の先端、逆三角形の頂点に当たる部分にバットヘッドをつける。三塁線からまっすぐ伸びるラインに合わせてバットを置き、グリップがつく位置に左足を置いて構える。常にホームプレートとの距離を一定に保つことで、構えとボールの見え方を安定させようとしているのだ。
「球場によってラインの太さが変わったりするけど、そこで多少ずれたりすることがないように。同じ位置で同じように構えるのは、同じようにボールを見るために、一番大事なこと。動く前の段階が最も大切だと思います」
また、打席後の大谷がよくダグアウト内でタブレットに目を通し、映像を確認する姿が見受けられる。これも構え、見え方の確認作業に繋がっている。
「今のスイングがどうなっていて、どんな見え方なのかを確認して、次はどんな軌道で振った方がいいのかをイメージしておかないと。打席を終えた直後が一番落とし込めるかなと思います」
一方で、メジャーでの歳月を経て、打撃へのアプローチは少しずつ変化も見せている。'21年のエンゼルス時代には、こんな言葉で打撃感覚を口にしていた。

