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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「クラブハウスはお通夜のようだった」山本由伸ノーヒッター未遂で降板→悪夢の逆転負け…それでもファンの心に残る"名勝負"になった理由
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2025/09/13 11:10
現地9月6日オリオールズ戦、9回2死からホームランを許した山本由伸。マウンドを降りるエースをロバーツ監督はハグして労った
2連覇を目指すチームにとって今季最悪レベルの敗戦。終了後のクラブハウスがお通夜のように静まり返っていたのも当然だったのだろう。酸いも甘いも知り尽くした大ベテランのクレイトン・カーショウがNFL戦を見るため、テレビのリモコンを探し求める声が聞こえた以外しばらくほとんど物音もしなかった。
「チームが勝つのがうれしい。それがみんなの目指しているところなので。今日は勝てたら最高でしたけど、負けてしまったので凄く悔しいです」
そこに居合わせたすべての人間を感嘆させるようなピッチングをしたにもかかわらず、勝利を手にできなかった山本はそう述べた。まさに天国から地獄に突き落とされた。
9回に生まれた2つの“if”
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試合後、最後の“If”として、一部のファンから「山本は被本塁打後も投げ続けるべきだったのではないか」という声も上がっていた。ノーヒッターの機会を失っても、山本に完投を目指させるべきだったのか……。
結論を先に言うと、あの場面での山本続投の線はゼロ。すでにMLBでのキャリアハイとなる112球を投げていたこと、しかもドジャースの目標がプレーオフでの戦いであることを考えれば、ノーヒッターのチャンスが消えた時点で“120球近くを投げさせての完投勝利”はもう選択肢ですらなかった。
「彼にはノーヒッターを狙うチャンスを与えるべきだと思った。チームの皆もそれを感じ、彼のために願っていたし、私自身も本当にそうなってほしかった。あのホームランは悪い球じゃなかったが、それで完封もノーヒッターも消えた。そこで、もう十分に投げさせたと判断した。あとは残り1アウトを取るだけだった」
試合後、ロバーツ監督は8回終了時点ですでに100球を超えていながら山本を続投させたこと、本塁打後に交代させたことをそう説明した。どちらも納得のいく判断であり、難しい選択ではなかったのだろう。他らなぬ山本も、「ヒットが出たら交代だろうと思っていました」と述べていたことは付け加えておきたい。

