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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「何をしているんだ」藤川球児監督(45歳)が激怒した“珍しい瞬間”…エラーした選手を“批判しない”監督術「全員で反省」こうして阪神を優勝させた
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/09/14 11:03
監督就任1年目でリーグ優勝に導いた藤川球児(45歳)
藤川監督が珍しく“批判”…いつ?
言い換えれば、藤川監督が「つまらないコメント」に徹したからこそ、阪神はセ・リーグを制覇できたのだ。そんな感情の起伏を見せない指揮官が珍しく報道陣の前で、選手名を挙げて批判した時があった。
■8月30日 勝ち 3対2 巨人(甲子園) ※高寺がバント失敗後、走らず
――打席に入る前の高寺に声をかけていた。
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「そういう問題ではないですね。バントのフライが上がって走っていないとか。その後、1軍の選手と同じように後ろに下がってしまって。逃げてんじゃない、自分のプレーに少しうまくいかないからって下がっているようではこのチームじゃ戦えない。何をしているんだと。高寺でそうということは他みんなそうだということですね。自分の責任ということで、1、2軍のスタッフ含めて全員で反省していきたいと思います」
なぜ、藤川監督は激怒したのか。高寺が「打ったら走る」という基本を怠ったからである。遡ってみれば、その2カ月半前にあった、佐藤輝の「確信歩き」と根本的に同じミスだった。毎日のように、失敗は全体の問題として、全員が考えるべきだと訴えてきたのに、伝わっていない選手もいた。
そのため、「自分の責任」と述べ、あらためて「高寺でそうということは他みんなそう」「1、2軍のスタッフ含めて全員で反省していきたい」と話したのではないか。珍しい叱責コメントとして話題になったが、注目すべき点は1つのミスを個人の問題で終わらせず、全体として捉えているところにある。やはり藤川監督のコメントは一貫していた。
このように、藤川監督は毎試合同じような談話を残すことで、「チーム」を1つにまとめた。優勝の原動力は「つまらないコメント」だったのである。


