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西山朋佳vs福間香奈の白玲戦と藤井聡太七冠「棋力の担保」週刊誌報道…現場の様子は「賛成か反対かではなく確認」総会にいた田丸昇九段の感触
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/09/07 11:00
西山朋佳白玲と福間香奈女流六冠が相まみえる白玲戦とともに、総会での「白玲5期でフリークラス編入」議案が話題となっている
福間は今年2月中旬に公式戦に復帰した。そして、3月に女流王座戦五番勝負で挑戦者の西山に3連勝、4月に女流名人戦五番勝負で挑戦者の西山に3勝2敗でそれぞれ防衛。6月にマイナビ女子オープン五番勝負で西山に3勝2敗で奪取して3回目の女流六冠となった。さらに白玲戦のA級で8勝1敗で優勝し、昨年に続いて西山に挑戦した。
一方の西山は福間とのタイトル戦で3連破されたが、ほかの棋戦は順当な成績を挙げている。ただ4月から5月にかけて「早急な手術および入院が必要」とのことで、2局の不戦敗があった。西山は昨年9月から今年1月まで「棋士編入試験」で激闘を繰り広げた。さらにタイトル戦などの対局日程が過密だ。体調が悪くなることは時にあると思う。
西山が白玲4期へまず先勝した
ヒューリック杯白玲戦七番勝負第1局では「振り駒」が行われ、西山の先手番に決まった。持ち時間は各4時間。
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両者の対戦成績は対局前時点で福間49勝、西山40勝(不戦局を含む)。タイトル戦の対戦は20シリーズで福間11勝、西山9勝といずれも拮抗している。直近のマイナビ女子オープンでは、西山は先手番の3局をすべて敗れ、失冠の要因となった。今期白玲戦は、西山の先手番での戦い方が課題だ。
西山は初手に飛車を7筋に振った。この三間飛車を武器にしている。福間も同じく振り飛車党で、5筋に飛車を振る中飛車を武器にしている。果たしてそんな出だしになったが、西山は早々と角交換し、両者のいつもの相振り飛車とは少し異なる展開に進んだ。
相振り飛車では、飛車の位置、玉の駒組みでいろいろなパターンがある。本局で西山は飛車を7筋から8筋、福間は5筋から2筋に転じた。左右を入れ替えると相居飛車に見える。
西山は用意してきた作戦とみられる「雁木(がんぎ)」の駒組みに玉を囲った。福間は低い形の矢倉の駒組みに玉を囲った。前者は柔軟さに特徴があり、後者は守りが堅い。西山は8筋の一段飛車を2筋に転換した。「地下鉄飛車」という手法で、相手の飛車を圧迫する狙いがある。しかし数手後に6筋から攻め、整合性で問題があった。福間は中央から動いて好機を得たが、具体的な手段を誤った。以後も攻め合いにいくべき順を逃してしまった。
そこから西山は福間の攻めを受けながら機を見て反撃した。▲8六桂と中段に打ったのが好手で、「攻めに専念できる形になって指しやすくなった」という。そこから相手玉に厳しく迫った西山が101手で勝った。終局時間は17時12分。福間は中盤で「大事に指しすぎてしまった」と感想を語った。
西山は課題の先手番で第1局を制した。そして福間が勝利した第2局(9月6日・鹿児島県)以降は各地を転戦する。白玲獲得4期を目指す西山と、初の女流七冠を目指す福間の熱い戦いが繰り広げられるだろう。
白玲5期で…「棋力の担保」発言の様子とは
さて6月6日に開かれた将棋連盟の総会では、前述のように白玲を5期獲得すれば、フリークラス編入の形で棋士になれる議案が上程された。

