「あと2回しかチャンス、ないねんぞ」高校生クイズのために転校した天才双子を襲った“まさかのルール変更”「知識問題ゼロ」「対策のしようがない」 

桜丘チームの本気度は、常軌を逸していた

　2018年、8月。『高校生クイズ』の全国大会に参加するため、桜丘チームは三重から東京にやってきていた。

「高1の時は予選でボロ負けして、来年はまた形式が変わるかもしれない。そうなったら、全国に戻ってこられるかもわからない。だから、『絶対に今年で全国制覇しないと』というのは明確に思っていました」

　そう2人が声をそろえるように、本選に挑む桜丘チームの“かかり具合”は、誤解を恐れずに言えば、常軌を逸していた。

ADVERTISEMENT

　この年は「地頭力」というテーマが影響したこともあり、例年と異なりいわゆる競技クイズの強豪校はほとんどが予選で敗退していた。それもあり、兄弟が競技クイズの大会で顔見知ったライバルたちは、その場にほとんどいなかった。

　そんな事情もあってか、大会にはどこか牧歌的な空気感が流れていた。

　良くも悪くも、ある種の運に任せて上がって来たチームも多く、勝負の場というよりも純粋に『高校生クイズ』というイベントを楽しみに来ている空気感が大きかったのだ。

双子のガチンコ発言に、会場は静まり返った

　例年、出場チームは大会前日に日テレのスタジオで一堂に会し、昼食時に自己紹介をする場がある。

「全国に来られるなんて思っていませんでした」「せっかくの機会なので、少しでも楽しんでいけたらと思います」

　そんな風に各チームが和気あいあいと大会への抱負を述べていく中で、桜丘チームだけが突如、爆弾を落とす。マイクを渡されるとたった一言、「僕らは優勝しにここに来ました」。予想外のガチンコ発言に、会場は思わずシーンと静まり返った。

「自己紹介が終わった後は、各出場者同士での歓談の時間があるんですけど、僕らは『優勝します』と一言だけ言って、そのまま座ってしまったんで。威圧感がすごすぎたのか、どこも話しかけてくれなかったです（笑）。こんなおかしな熱量で臨んでいたのは多分、ウチだけだったんでしょうね」

　問はそう苦笑する。ただ、その熱量も当然と言えば当然である。

『高校生クイズ』のために兄弟そろって転校し、リスクを背負って人生を賭けた勝負に出たのだ。大げさでなく全国制覇でもしなければ、それこそ割に合わない。

　こうして東兄弟一世一代の大勝負は、微妙に冷ややかな空気を纏いながら幕を開けた。

＜次回へつづく＞

（撮影＝鈴木七絵）

#3に続く

高校生クイズに人生を懸けた双子の天才「パワー系の種目はやめて…」難問の救世主となった“3人目の男”「番組側も想定外だった」まさかの行動とは？

#4

「やっぱり、2人だから」高校生クイズで優勝した双子のその後…大学が分かれても「道が違った感じはなかった」東兄弟が明かす“それぞれへの思い”

#3

高校生クイズに人生を懸けた双子の天才「パワー系の種目はやめて…」難問の救世主となった“3人目の男”「番組側も想定外だった」まさかの行動とは？

#2

「あと2回しかチャンス、ないねんぞ」高校生クイズのために転校した天才双子を襲った“まさかのルール変更”「知識問題ゼロ」「対策のしようがない」

#1

クイズのために「偏差値78の名門校」から「偏差値44の特色校」に転校…!? 伊沢拓司と田村正資に憧れて『高校生クイズ』を制した双子の青春秘話