Number ExBACK NUMBER
「あと2回しかチャンス、ないねんぞ」高校生クイズのために転校した天才双子を襲った“まさかのルール変更”「知識問題ゼロ」「対策のしようがない」
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byNanae Suzuki
posted2025/09/09 11:01
2018年の『高校生クイズ』で優勝し、現在はQuizKnockに所属する東問と東言
高校生クイズのために転校までしたのに…
大会の設計に見えた「誰にでも日本一のチャンスはある」は、むしろ東兄弟から見れば「競技クイズが強くても、日本一のチャンスは増えないよ」と言われているのと同義でもあった。
ただ、すでに問は『高校生クイズ』に言と一緒に参加するために転校までしてしまっている。
ある意味でクイズに人生をベットしたのだ。勝つのが難しいからと言って、挑戦しないという選択肢は存在しない。言は当時の必死さを思い返す。
ADVERTISEMENT
「とりあえず、パズルの本とかを読んでいましたね。マッチ棒でつくるパズルとか……普通の知識を問われる競技クイズ系の問題なら、これまで鍛えているので勝負はできる。じゃあ、それ以外の可能性を、どこまで潰すことができるのか。それが重要かと思って」
問も言い得て妙なたとえで、当時の困惑を表現してくれた。
「なんかこう……甲子園を目指していたら『今年は野球盤で日本一を決めます』と言われた感じでした。でも、やらんわけにもいかない。じゃあ、野球盤の練習をするしかない。そんな感じでした」
また、この年からは再び2人1組ではなく3人1組のオーソドックスな『高校生クイズ』のスタイルに戻った。3人目のメンバーは前年、桜丘で言と一緒に大会に出た同級生の小林雅也にお願いした。
そして7月。「ここで負けたら、お話にならない」という悲壮な覚悟と、不透明なトレンドとともに前年は「ボロ負けして」(問)敗退することになった、運命の地区予選を迎えることになる。
「一切、知識問題がなかった」
その地区予選の問題は案の定、例年とは全く違う形式になっていた。
「当時は基本的に各県の1位が通過して全国大会に出られるシステムでした。前年までは、『ウルトラクイズ』的といっても基本的な競技クイズらしい選択問題とか、そういうのも出てはいたんです。でも、この年は本当に一切そういう知識問題がなかった」(言)
言が対策していたマッチ棒パズルの問題のように、元々答えを知らなくてもその場で頭を捻ればわかる反面、事前の知識量によるアドバンテージはほとんどない問題ばかりだったという。
もちろん例年もこういった「ひらめきパート」はあった。
だが、それと並行して「知識パート」もあった。そして、競技クイズ勢は知識パートの取りこぼしがほとんどない。だからこそ全国に行きやすいという事情があった。
「でも、この年は完全に知識パートはゼロ。本当にコンセプトに忠実で、まさに地頭力を問うような感じでした」(問)

