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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ドジャース山本由伸のエース級成績と佐々木朗希“マイナーで苦闘”…明暗の差を探る「5球種が一級品」「正捕手スミスとの相性問題も改善」
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2025/09/07 06:01
山本由伸と佐々木朗希。大谷翔平とともに今後のドジャース投手陣に欠かせないが、現在の状況を生み出した差とは
日本人投手はフォーシームとスプリットのコンビネーションを基本とする。山本もそのパターンだが、それに加えて、オリックス時代の山本は打者のタイミングを外す絶妙のカーブが持ち味だった。しかし昨季はカーブで2被本塁打。それもあってか今季はややカーブの比率を下げて、カッター、シンカーなどフォーシームに近い球速の「速い変化球」の比率を上げ、球種の幅を広げたことがわかる。特にシンカーは昨季の4倍も投げている。
ここで触れたいのは「ピッチトンネル理論」というものだ。
途中まで速球(フォーシーム)と変わらない軌道の球が、打者の手元で内角、外角に変化すると打者は対応できないという。カッター、シンカーはまさにこういう球種であり、今年の武器になっている。
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大谷翔平のような100マイル近い高回転のフォーシームこそないが、一級品の球種を5つ揃えて長いシーズンを戦っていると言えよう。
右、左打者関係なく抑えている
【右打者、左打者の被打撃成績】
〈2024年〉
右 179打47安5本7球54振 率.263
左 161打31安2本15球51振 率.193
〈2025年〉
右 225打58安10本28球91振 率.210
左 257打48安3本20球76振 率.187
1年目に比べて今季は、右・左打者ともに被打率が改善している。打者に芯でとらえられることが少なくなっているのだ。ただし、右打者の被本塁打は倍増している。対戦打者数が増えたこともあるが、右の強打者は山本の投球に的を絞って思い切り振ってきている。制球力が良い投手だけに、いわゆる「ヤマを張る」ことができるのだ。
ここ2年の20被本塁打のうち、2本打たれたのはロッキーズのエセキエル・トバーだけ。苦手な打者はあまりいないが、トバーだけは2年通算で10打数7安打2本塁打と、山本を大の得意にしている。今後は特に右の強打者には警戒が必要だろう。
“正捕手スミスとの相性問題”も解決
メジャーデビューした当初は「捕手との相性」が気になったものだ。
正捕手で打撃の良いウィル・スミスはリード面において、強気でやや単調な配球になる傾向があった。控え捕手のオースティン・バーンズが受けたときの方が数字が良かったのだが、今年5月にバーンズは戦力外となり、ルーキーのダルトン・ラッシングが昇格した。今季はどうなっただろうか?

