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「俺に勝てないならUFCにいるべきじゃない」UFC11位の38歳に“まさかの一本負け”…朝倉海の連敗は必然なのか?「今の時点では無理」対戦した王者の予言 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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posted2025/08/26 17:07

「俺に勝てないならUFCにいるべきじゃない」UFC11位の38歳に“まさかの一本負け”…朝倉海の連敗は必然なのか?「今の時点では無理」対戦した王者の予言<Number Web> photograph by Getty Images

38歳のティム・エリオットに一本負けを喫した朝倉海(31歳)。UFC2連敗と、早くも窮地に追い込まれている

「俺に勝てないならUFCにいるべきじゃない」

 そして、もうひとつのポイントはグラウンドだった。現王者が丸裸にした朝倉の弱点を、エリオットも的確に突いたということだ。結果的に2試合連続でパフォーマンス・ザ・ナイトを受賞した勝者は試合前に自らをUFCのゲートキーパー(門番)に見立て、こんな発言もしていた。

「みんな“ゲートキーパー”のような役割を軽視するけど、俺にとってはそれが公平な評価だと思う。フライ級でティム・エリオットに勝てないなら、UFCにいるべきじゃない。俺はそれで構わない」

 それにしても、RIZIN時代には弱点とみなされなかったグラウンド技術がなぜUFCでクローズアップされるようになったのか。それはUFCとRIZINのルールの違いによるところが大きい。グラウンド状態で動きが膠着すれば、RIZINはブレイクを命じるタイミングが早い。一方、UFCはブレイクをかけることもあるが、そのまま続行させケージレスリングによって試合を動かそうとする傾向が強い。当然、ケージとリングの違いもある。結果論ではあるが、RIZINの環境は朝倉にとって有利に働いていたのかもしれない。

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 エリオット戦の敗北を受け、朝倉のUFCフライ級ランキングは15位からランク外へと変化した。現在この階級でランクインしている日本人ファイターは5位の平良達郎だけになった。

 ちなみに海外のサイトである『Fight Matrix』が制定する世界のフライ級ランキング(8月24日更新)を覗いてみると、日本人ファイターとしては堀口恭司が5位でトップにつけ、平良が7位、扇久保博正が15位、元谷友貴が22位と続く。朝倉はランキング内では最下位の25位だった。

 連敗を喫した朝倉に対する海外メディアの評価は厳しく、MMA専門サイトである『MMA Junkie』は「デビュー戦と同じように、この試合も2ラウンドでサブミッションで敗北を喫した」とUFCファイターとしての実力不足を指摘した。今回の敗北を受け、RIZINの榊原信行CEOは「(海は)負けたらRIZINが負けたみたいとか思わずに、もっと自由にやればいい。兄ちゃん(朝倉未来)がそうだったように、2連敗なんていくらでも取り戻せる。ここからという感じ」と叱咤激励するが、期待が大きかっただけに多くのファンは現実を受け止めきれずにいる。

 膨らみすぎた幻想と、世界との差を痛感したあとの寂寥感――我々は、いつまでこの温度差に苦しまなければならないのか。

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