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甲子園の風BACK NUMBER
沖縄尚学・末吉良丞「512球」の疲労度は? 県大会で対戦した興南・島袋洋奨コーチが語る“本当の末吉”「149kmを連発」「表情ひとつ変えず…まさにエース」
posted2025/08/22 17:40
ここまで5試合に登板し、計512球を投じている沖縄尚学の2年生エース・末吉良丞
text by

松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph by
Hideki Sugiyama
「末吉良丞だけじゃない」右腕・新垣有絃の覚醒
よく勝った。
いや、沖縄県民からすれば、よくぞ勝ってくれた、だろうか。
準決勝の山梨学院戦。6回表に1対4と3点ビハインドになったとき、沖縄尚学を応援する誰もが「これで終わりか」と天を仰いだ。
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沖縄尚学の快進撃は、ふたりの2年生投手の存在なくして語れない。
背番号1の左腕・末吉良丞の凄さは、すでに日本中に伝わっている。思い返してみれば準々決勝の東洋大姫路戦、一打で逆転サヨナラとなる9回2死満塁のピンチを抑えても「目標はもっと先」と言わんばかりの顔をしていた。準決勝で自らのミスも絡み6回途中にランナーを残して降板したときも、どこかさばさばとした笑みを浮かべていた。
末吉の本当の凄さは、球の速さやスライダーのキレもさることながら、どんな場面でも一喜一憂せずに平常心のままの顔つきでいられることだ。
山梨学院戦の球威を見るかぎり、真夏の連投による疲労は間違いなくあるだろう。しかし、その一方でいかなるピンチであっても表情は崩れず、打ち取ったときも過剰に感情を出さない。末吉の強心臓ぶりは「本当にまだ高校2年生かよ」と、いい大人たちを動揺させる。
そして、末吉に勝るとも劣らない投球で準決勝のマウンドを守りきった2年生がいる。甲子園は選手を劇的に成長させる場所だとあらためて世間に知らしめたのが、背番号10を背負う右腕・新垣有絃だ。
2回戦の鳴門戦で先発し、5回87球を投げて被安打4、8奪三振の無失点。これで甲子園の雰囲気にも慣れ、準々決勝の東洋大姫路戦も先発で6回100球、被安打2、7奪三振、1失点にまとめた。そして準決勝の山梨学院戦。6回2死二・三塁から末吉の後を受けマウンドに上がり、3番の梅村団をセカンドゴロに仕留めた。さらに7、8回を三者凡退で抑え、角度のあるストレートは最速146kmを計測した。好救援に打線が応え、沖縄尚学は逆転に成功する。
5対4と1点リードで迎えた最終回、簡単にツーアウトを取った後、連打を浴びて2死一・二塁。長打が出れば逆転という場面で、打ち気を逸らすゆるいカーブでキャッチャーフライに打ち取りゲームセット。ここまで3試合に登板した新垣の防御率は、末吉の1.10を上回る0.63。二番手ピッチャーとは思えないほどの堂々とした姿でマウンド上に君臨していた。


