甲子園の風BACK NUMBER
「横浜はあの時の大阪桐蔭みたいだと」“左手ハンディの巧打”だけでない努力の超美技…県岐阜商・横山温大は吉田輝星に憧れた甲子園ヒーロー
posted2025/08/20 17:02
県岐阜商の横山温大。左手ハンディだけでない野球人としての魅力で、甲子園ヒーローへと駆け上がりつつある
text by

間淳Jun Aida
photograph by
Hideki Sugiyama
スタンドの歓声でグラブに入っていると
横浜・奥村頼人が引っ張ったライナー性の当たりが右翼へ飛ぶ。センバツ王者の4番に座る打者の打球は速い。そして、伸びる。
県岐阜商の右翼・横山温大は半身で白球を追った。右手につけたグラブを目いっぱい伸ばす。同時に球場は拍手と歓声に包まれた。
「捕球した感触がなくて、スタンドの歓声でグラブに入っていると分かりました。ギリギリでキャッチできて良かったです。先制点を許すと相手に流れがいってしまうと思っていたので、いいプレーができて良かったです」
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場面は2死二塁。抜かれていれば先制点を許し、相手が主導権を握りかねない。横山が超ファインプレーの守備でチームを救った。
横山がもたらした勢いをチームメートが攻撃につなげる。無失点で切り抜けた直後の1回裏、先頭の駒瀬陽尊が幸先よく安打で出塁する。1死から3番・内山元太の打球は左翼へ。風に流されてライン際に落ち、横浜から先制点を奪った。
横山は打席でも魅せる。4回の第2打席。2死から安打で出塁した小鎗(こやり)稜也を一塁に置き、初球を左翼前へ弾き返す。横浜のエース織田翔希投手が投じた146キロの速球を逆方向に打つ狙い通りの打撃。続く打者の適時打を呼び込んだ。
「2アウトでしたが、次につなぐ意識で打席に入りました。織田投手の速いストレートに対して、バットを短く持ってシャープにレフト方向へ打ち返す打撃を心がけました」
優勝候補の大本命・横浜とがっぷり四つに組む県岐阜商を聖地の観客も後押しする。特に、横山のプレーひとつ一つに一際大きな拍手が沸いた。
「好ゲームになって、球場のボルテージも上がっていたので、自分も気持ちが高まっていきました。大歓声が心地良くて、野球をやっていて良かったと思った瞬間でした」
金足農・吉田に憧れたが入学直後は“球拾い”
横山はハンディを乗り越え、壁にぶつかっても野球を続けてきた。それは、甲子園への憧れがあったから。

