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野球クロスロードBACK NUMBER
「投げられるまで待ってる」仲間の言葉が支えに…甲子園“14年ぶり復活の古豪”エースが“手術回避”で最後の夏に懸けるワケ「皆のために投げたい」
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/16 17:03
甲子園2回戦の花巻東戦で実に5カ月ぶりにマウンドに上がった東洋大姫路の阪下漣。背番号10の元エースが右ひじのケガでも手術回避を選んだ理由とは?
くすぶる右腕に指導者からハッパが飛ぶ。
「今のままでは復帰できないぞ」「夏のメンバーに入れないかもしれない」
これが阪下の胸をえぐった。
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「自分の心に刺さって、余計に落ち込んだというか。チームのためにやっていきたいと思っていたなかでそう言われたので、『なんのために今までやってきたんだろう?』って」
進まないリハビリ…支えになった仲間の存在
決して順調ではなかったリハビリ期間中について阪下は、心が「折れそう」ではなく「折れた」と断言していた。
うまくいかなかった現状における心情を曖昧にすることなく、不安ながらも前へと進めた要因。阪下はそれを仲間だとはっきり言った。
自分が故障してからエースとして孤軍奮闘してきた木下鷹大が、「甲子園に連れていくからな」と常に寄り添ってくれた。白鳥翔哉真、渡辺拓雲、高畑知季といったレギュラー陣も同じように約束してくれた。
なにより阪下の心を揺さぶったのが、夏のメンバーから外れた3年生たちの声だ。
応援団長の児波諄宥が、焦る阪下の想いを汲み取ったように落ち着かせる。
「ゆっくり治せよ。ちゃんと投げられるまで待ってるからな」
彼らの一つひとつの言の葉を、阪下は丁寧にすくい上げ心に馴染ませていく。
「外れた3年生の分までやらないと、自分がメンバーに入っている意味がないっていうところを再認識しました。チームのみんなのために投げたい気持ちが強くなりましたし、心が折れても頑張れました」

