「投げられるまで待ってる」仲間の言葉が支えに…甲子園“14年ぶり復活の古豪”エースが“手術回避”で最後の夏に懸けるワケ「皆のために投げたい」 

　兵庫大会が始まってからも、阪下の右ひじは万全ではなかった。それでも彼は、東洋大姫路の紛れもない戦力だった。

「阪下を投げさせるまで負けない」…チームが結束

　大会終盤に入っても「まだ60％くらい」と評していた監督の岡田龍生は、「阪下を投げさせるまで負けない」という、ベンチから湧き出るチームの結束を捉えていた。

「僕は客観的に投げられるか、投げられないかを見てきたつもりなんですけど。県大会では『点を取ったろ』ってやってたらしいですけど、彼らの気持ちがわからんでもないし。あいつの普段がええ加減しとったら、そんなもんないだろうしね」

2019年夏には履正社を率いて甲子園初制覇を果たした岡田監督。2022年より東洋大姫路の指揮を執る　©︎Hideki Sugiyama

ADVERTISEMENT

　そして、1977年に全国制覇を成し遂げるなど「夏の東洋」と呼ばれたチームは、14年ぶりに夏の甲子園出場を決めた。

　阪下にとって、最後の夏。

　復帰登板へ向けた準備の過程で、肩やひじに多少の張りを感じてはいた。しかし、信頼するピッチングコーチの山崎崇正から「思い切って腕を振っていいんだからな」と背中を押されたことで、右腕から迷いが消える。

　そうはいったところで、いざ実際に甲子園の舞台に立つと、やはり恐怖心が去来する。

「任せた！」

　8回までマウンドを守ってきた木下からバトンを受け継ぐと、阪下は使命感を宿す。

【次ページ】　最後の夏…「チームのために投げたいです」