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「苦い思い出の球場なので…」甲子園“優勝候補の一角”エースに起きていた悲劇…背番号10で“5カ月ぶり登板”の秘話「みんなが連れてきてくれた」
posted2025/08/16 17:02
14年ぶりに夏の甲子園で3回戦進出を決めた古豪・東洋大姫路。センバツでエースを務めた阪下漣は実に5カ月ぶりにマウンドに上がった
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph by
Sankei Shimbun
今年も幕を開けた夏の甲子園。熱戦が続く中、優勝候補の一角と目されるのが兵庫の東洋大姫路だ。同校で春までエース番号を背負った快腕は、実に5カ月ぶりの登板で甲子園のマウンドへと上がった。果たしてそのウラには、どんな決断と葛藤があったのだろうか。《NumberWebレポート全2回の1回目/つづきを読む》
5カ月ぶりの登板。それが甲子園である。
岩手の強豪・花巻東との2回戦。8-4でリードした9回、無死二塁でその場面は訪れた。
右ひじの故障を経て復帰を遂げた東洋大姫路の背番号「10」が、満を持してマウンドに立つ。2者連続で三振に打ち取ると、最後のバッターをショートゴロに仕留めた。
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阪下漣による、完璧な火消し。最後のボールは143キロを計測していた。復活の序章は、上々の出来である。
5カ月ぶりのマウンド…「苦い思い出の球場だったので」
「ホッとしたというか」
阪下の本音が漏れる。
この時、彼には異なるふたつの感情が同居していたという。甲子園球場の大観衆に後押しされたことで実感した鳥肌は、純粋な喜びを表していた。同時に恐怖にも襲われ、足が震えた。
「苦い思い出の球場だったので。『もう一度、ああなったらどうしよう』って」
阪下の述懐は、どちらかというと後者が勝っていることを暗示している。

