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「藤井聡太は5期でA級だが」名人経験者でも昇級に苦しみ…順位戦の“シビアな世界”「単年の不調では死活問題」だからこそできた降級点制度
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/08/14 11:00
2023年、名人獲得時の藤井聡太七冠。順位戦は5期でA級に到達した
10期:豊島将之九段(35)、渡辺明九段(41)
9期:佐藤康光九段(55)
8期:米長永世棋聖、丸山忠久九段(54)、佐藤天彦九段(37)
7期:森内俊之九段(54)
5期:藤井聡太七冠(23)
A級に5期で到達し、A級在籍1期目で名人挑戦権を手にした藤井以外は――順位戦で意外と滞留していた。
昔の奨励会にあった「予備クラス」
昔の奨励会(棋士養成機関)は三段以下が合体した方式で、月に4局の例会で8連勝か12勝4敗で三段から四段に昇段して棋士になった。しかし、ある年に新四段が多く生まれたので、将棋連盟は財政上の事情によって1958年に「予備クラス」を設けた。三段とC級2組降級者が出場した東西リーグの優勝者同士が対戦し、勝者が棋士になった。世にいう「東西決戦」で、四段昇段者は年間2人の狭き門だった。後年に名人になった中原と米長でも、予備クラスに3年ほど滞留した。
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その後、三段たちが「あまりにも厳しい」と将棋連盟に談判し、前期・後期の東西決戦の敗者同士による対局の勝者も棋士になれる制度に緩和された。
私こと田丸は、その制度の過渡期にいた一人である。〈つづく〉

