「背番号11」ドラ1左腕が21歳で戦力外…元ヤクルト「アキラ」伊藤彰のいま「全てを失った男として」大学入学→“いつか神宮へ”第二の人生 

野村監督との出会いは「宝物」

　現役時代、本拠地・神宮球場のマウンドに立つことは一度も叶わなかった。しかし、苦しい思い出ばかりだったプロでの4年間も、振り返ってみれば大きな財産になっている。プロ入りから2年間、監督として仰いだ故・野村克也氏のことも忘れられない。

「肩の検査のためにアメリカに行くと決まった時も、手術を受けて帰国した時も、不安な心中を察するように優しい眼差しで『焦らず頑張りなさい』と声をかけてくださった。直接指導を受けることはありませんでしたが、ヤクルトに受け継がれている“野村イズム”を享受できたことは、野球を深く考えるきっかけになった。ミーティングの資料は今も私の宝物です」

「後悔はない…」苦しみも糧に

　怪我に苦しみ手術を受けたことも、指導する側の今となっては貴重な経験だ。

ADVERTISEMENT

「故障に悩む選手の気持ちに寄り添って、同じ目線で話をすることもできる。自分がなぜ怪我をしてしまったのか、なぜうまくいかなかったのか、という“Not How To”によって、“How To”がより鮮明になっていく部分もある。私が経験したある種の失敗例は、今の学生たちが力強く進んでいく糧にもなるはずだと信じています」

　肩の痛みを抱えながら、投げ続けた高校時代。プロ入り後の葛藤と苦しみ。あの時こうしておけば、という分岐点はいくつもあっただろう。それでも伊藤さんは「後悔はない」と口にする。「アキラ」として歩んだプロ野球人生は、時を経て辛苦もまた“結晶”となり、第二の人生に彩りを加えている。

〈第1回、第2回も公開中です〉

#1から読む

「7回に突然、肩に激痛が…」山梨学院“夏の甲子園初勝利”のヒーローが暗転「命にかえても、と投げ続け」悲劇の“高校ナンバーワン左腕”が歩んだ道

#3

「背番号11」ドラ1左腕が21歳で戦力外…元ヤクルト「アキラ」伊藤彰のいま「全てを失った男として」大学入学→“いつか神宮へ”第二の人生

#2

野村克也監督が指名のドラ1左腕「アキラと呼ばれた男」1年目で手術→21歳で戦力外…“消えた天才”の壮絶人生「ヤクルトには感謝してもしきれない」

#1

「7回に突然、肩に激痛が…」山梨学院“夏の甲子園初勝利”のヒーローが暗転「命にかえても、と投げ続け」悲劇の“高校ナンバーワン左腕”が歩んだ道