松坂大輔が語る甲子園「横浜vsPL学園」延長17回の激闘秘話「あの感覚はなんだったんですかね。終わるのがもったいないと思っていたのかな」 

　だからといってイヤな感じだったわけでもないんです。延長で勝ち越せば、その裏を抑えた時点で試合は終わるのに......あの感覚は何だったんですかね。終わるのがもったいないとでも思っていたのかな。延長16回表にも勝ち越したのに、その裏に追いつかれて、ああ、やっぱり終わらねえんだなと思って、引き分け再試合を覚悟したのを覚えています。それまでの野球人生であんな展開の試合をしたことがなかったので、そんな（勝利ではなく引き分けを覚悟する）気持ちになったのかもしれません。

　夏の甲子園が始まる直前、僕は監督の部屋に呼ばれました。そのとき、監督に「この大会はお前に4連投はさせないから」と言われています。僕は何連投だってできると思っていましたから「なぜですか」と聞き返しました。そうしたら監督は「お前にはまだ先がある、甲子園で終わる人間じゃない」と言われて、僕は納得いかない返事をした気がします。もしPL戦が再試合になればどころか決勝まで5連投ですから、引き分けが頭を過よぎったとき、明日、僕は先発するのかな、するに決まってるよな、などと考えていました。

僕の中でストレスになっていたこと

　もうひとつ、僕の中でストレスになっていたことがありました。じつは、あの試合ほど自分のしたいことを我慢した試合はなかったんです。たとえば1番の田中一徳に対して三遊間を極端に狭く守るシフトを敷いていました。でも、そんな特別なことをするのがものすごくイヤでした。シフトは敷いてほしくなかったし、普通に守ってほしかった。一徳の打球はことごとくシフトの逆に飛んだイメージがあります。

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　結局、あの試合は一徳にヒットを4本、打たれました。たぶん普通に守っていたら2本はアウトにできたと思うんです。（5番の）大西（宏明）にもヒットを3本打たれましたが、やたらとカーブが多かった。もちろん（キャッチャーの）良男は僕よりも相手のことを研究していたし、監督や部長が出すデータや作戦に応えるピッチングをしなきゃと僕もずっと思ってきました。ところがあの試合に関しては、いくつかのことが裏目に出ていました。それまでそんなことはなかったのに、なぜか、これは逆じゃないのかな、と感じることが多かったんです。

11回裏、PL学園・大西のタイムリーで二塁から平石が生還し6-6の同点に　©︎JIJI PRESS

　11回裏に打たれた大西の三遊間への同点タイムリーもそうでした。6−5と1点をリードして、ツーアウト二塁で5番の大西を迎えます。あの日、僕のカーブは大西に合っていました。だからカーブはイヤだなと感じていたのに良男が初球、カーブのサインを出してきた。だったら首を振って、まっすぐかスライダーを投げておけばよかったのかもしれません。でもあのときの僕は、だったらサイン通りのカーブを投げてどうにかしてやると考えたんです。つまり、ストライクを取るのではなく、ワンバウンドさせるつもりでカーブを投げました。

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