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甲子園で史上初“ナイター開幕戦”に隠された「ある秘密」…創成館が“U18代表候補”プロ注スラッガーを4打数無安打に抑えた「夜間試合の兵法」秘話
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田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/06 17:00
甲子園史上初のナイター開幕戦となった創成館と小松大谷の一戦。勝利した創成館には夜間試合特有の特徴を捉えた「ある戦術」があった
田西は森下のストレートを「ファウルにしかならなかった」と言い、山下は小松大谷打線に「ファウルが増えた」と見た。それぞれの感じ方は違ったとしても、事実として言えるのは、ナイターになったことで森下のストレートがより効力を発揮したことだ。
奪三振のペースが雄弁に語る。
3回までは3個だった奪三振が、4回と5回には2個ずつと明らかに増えた。それは、カクテル光線に照らされたマウンドで腕を振る森下が打ち出す自信が答えだ。
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「真っ暗になった6回か7回くらいから、相手バッターが振り遅れているなと思ったんで、『追い込んだらストレートでいけるな』と」
3回以降に打たれたヒットはわずか1本。13奪三振と圧巻のピッチングだった。
監督の稙田は、153球の完投を演じた森下に「流れを変えてくれた」と賛辞を贈った。
創成館が見せた「ナイターの兵法」の正体
この試合でもストレートの球速は140キロ台を記録していたように、森下のピッチャーとしての能力の高さがもたらした結果ではある。彼らの証言からもわかるように、そこに「ナイター」という付加価値が加わったことで、盤石の勝利を手にできたわけだ。
昨年から最も暑い時間帯での試合を避けるために午前と夕方の2部制が導入されたことによって、甲子園のナイターはもはや当たり前になったと言えるだろう。
そんな時代に教えてくれたのが、創成館の“ナイターの兵法”だった。

