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甲子園で史上初“ナイター開幕戦”に隠された「ある秘密」…創成館が“U18代表候補”プロ注スラッガーを4打数無安打に抑えた「夜間試合の兵法」秘話
posted2025/08/06 17:00
甲子園史上初のナイター開幕戦となった創成館と小松大谷の一戦。勝利した創成館には夜間試合特有の特徴を捉えた「ある戦術」があった
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
ブルートレイン学園という学校があった。
エースの隼走は、ナイターの試合になると無類のピッチングを発揮する。
明々と光る照明を巧みに使ったスローカーブは、バッターに「消える」と言わしめるほどで、甲子園では「ドカベン」こと山田太郎を擁する明訓を苦しめた。
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この試合はフィクション。あくまでマンガの世界である。
甲子園史上初の「ナイター開幕戦」
“地の利”を生かす。
その意味では、今年の夏の甲子園で開幕戦に登場した創成館も同じだった。
「去年、ナイターで2試合やってますんでね」
監督の稙田龍生が不敵に笑う。
昨夏の甲子園。初戦の白樺学園戦と2回戦の大社戦がいずれもナイターだった経験を、稙田は有効に活用する。
U-18日本代表候補にも選ばれる注目の田西称をはじめ、小松大谷のバッターはよくバットが振れていると分析。そういった場合には、ピッチャーは変化球で的を絞らせないといったように、かわすピッチングを指示するのがセオリーと言えばセオリーだ。
稙田は大胆だった。
先発するエースの森下翔太とキャッチャーの山下翔のバッテリーにこう告げる。
「初回は真っすぐでいけ」
監督の指示通り、初回にストレート中心の配球で挑んだ創成館バッテリーは3安打を許し、1点を先取された。

