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甲子園でいきなり“強風”ハプニング「これ失敗したら、切腹ちゃう?」観客ザワザワ…酷暑の高校野球、現地で私が見た異変「昨年とここが変わった」
posted2025/08/06 17:25
甲子園開会式、いっせいに給水する選手たち
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph by
JIJI PRESS
えっ? あれれ。
ヘリコプターは何事もなく甲子園上空をスルーし、始球式のボールは落下してこなかった。
8月5日に開幕を迎えた甲子園。開会式後の第1試合を前に始球式が行われるはずだったのだが……。ボールが落ちてこないという”珍事“が起きた。
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球場のスクリーンにはヘリコプター内の映像が映し出されていたが、どうやらボールにくくりつけられた朝日新聞の社旗が強風に煽られ、落とせなかったように見えた。
「担当者、切腹ちゃう?」
これ、どうするんだろ? と思ったが、そのとき球場から沸き起こったのが、
「もう1回、もう1回!」
というコール。それに合わせて手拍子まで起きた。
当意即妙のツッコミ、さすがは「笑いの帝国」である関西は違うと感心しながら(東京ではまず起きないリアクションだと思う)、私も手拍子に加わった。
すると、レフトスタンドの方からヘリコプターが旋回してきた。再チャレンジであります。私の後列に座っていた女性4人組が言う。
「大丈夫やろか? これで失敗したら、担当者、切腹ちゃう?」
穏やかではないご意見だが、思わず笑ってしまった。ただ、この言葉は観客の思いを凝縮していた。この日は強い浜風が吹いており、ボールを落とすことさえ難しいというのは想像できたからだ。
再び球場上空にヘリコプターがやってくると、緊張感は一気に高まった。ところが2度目もなかなかボールが落ちてこない。またも失敗か! と思った瞬間、ボールが投下された。後列の女性が言う。
「ホームランなるんちゃう? これ!」

