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「1ラウンドから行こうか…」中谷潤人が明かした西田凌佑との王座統一戦“サプライズ奇襲”の真相「正直言うと、最後の最後まで不安があった」
posted2025/08/20 11:04
WBC・IBF世界バンタム級統一王者となった中谷潤人が、西田凌佑との統一王座戦「激闘の舞台裏」を明かした
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
衝撃的だった“サプライズ奇襲”の真相
なぜ、誰も予想していなかったフルスロットルの“サプライズ奇襲”を敢行したのか。そこにどんな深い意味があったのか――。胸にストンと落ちるような答えにまだたどり着いていない気がしていた。
プロボクシングWBC世界バンタム級王者“ビッグバン”中谷潤人がIBF同級王者の西田凌佑を相手に臨んだ日本人世界王者による王座統一戦(6月8日、東京・有明コロシアム)。試合開始と同時にいきなり前に出て、ガードの上からでもワイルドに強打を叩き込んでいくあまりに前のめりなスタイルはこれまでと真逆であまりに衝撃的であった。
緊張感のある息をのむ激しい打ち合いが続いたなか、肩を痛めた西田が6ラウンド終了時に棄権を申し出て激闘にピリオドが打たれた。
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王座を統一した中谷は試合から1週間後に練習を再開している。7月下旬のこの日も次にどんな相手が来てもいいように、あらゆる想定をしながらトレーニングに落とし込んでいた。ドラムミットに打ち込むパンチの音は、ラウンド終了を告げるアラーム音をかき消すほどだ。
統一戦を乗り越えたことで中谷はまた一段とたくましくなった。井上尚弥との対戦に向けて、絶対に手に入れなければならなかった何かがあの舞台にはあった。
ルディ・トレーナーとの作戦会議
試合の1カ月半前、中谷は恒例のロサンゼルス合宿へと向かった。デビュー前から師事するルディ・エルナンデストレーナーのもと、1カ月に及ぶ過酷なトレーニングを行なうためだ。到着したその日に、作戦会議が待っていた。
「毎回、ルディさんの自宅でそういう(作戦の)話にはなるんです。僕から、西田選手はうまいので相手の流れにはさせたくないと伝えたら『じゃあ1ラウンドから行こうか』と返されて。聞いた瞬間“ああ、行くんだ”と思いました。やったことがないので不安にはなりましたけど、“楽しそうだな”という気持ちのほうが上回っていきました」


