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「恐怖心を打ち払い未知の自分を出せた」中谷潤人が語る“来たるべき井上尚弥戦”「どんな状況でも対応するのが井上選手」「戦う場所は気にしていない」
posted2025/08/20 11:06
WBC・IBF世界バンタム級統一王者となった中谷潤人が、“来るべき井上尚弥戦”について語った
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
キャリア一番のビッグマッチ
どんな試合であれ結局は自分のペースにしっかりと引き込んでしまうのが中谷潤人の強みである。
荒々しく「行き切る」よもやの作戦でスタートを切り、それを継続して西田凌佑の体力を削りながら5ラウンドにはワンツーをクリーンヒットさせた。エンジンの出力をさらに引き上げた6ラウンドはパワフルを維持しつつもフットワークを使いながら、勢いよくワンツーを叩き込もうとする。中と見せて外、外と見せて中。角度を変えながら、様々なパンチを見舞っていく。中谷本来のスタイルが随所に出ていた。
「西田選手はジャブがうまいので、そこで打ち負けてボクシングが崩れてしまったら良くない。そうならないように1ラウンドから出ていって、逆に相手のボクシングを崩してダメージを与えてから、行くだけじゃなくてジャブでコントロールしつつ自分のやりたいボクシングをする。(ラウンドが進んで)その選択肢が出てきて、足を使ってジャブで翻弄していくというのもやれるなって。流れのなかでうまくできた感触はありました」
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12ラウンド、パワー全開でやり切る覚悟と準備がありつつ、ペースを握っていれば状況に合わせて自分の引き出しから最良のものを選択していくことができる。ワイルドからスマートに色を移していった5、6ラウンドがまさにそれだった。
右肩を脱臼し、右目も腫れ上がっていた西田は6ラウンド終了後に試合続行を断念。中谷は陣営の一人ひとりと抱き合って喜び、WBC、IBF2つのベルトを両肩に掛けた。その重みを噛みしめているようでもあった。
恐怖心を打ち払い、未知の自分を出せた
積み上げてきた31試合のなかで、西田との王座統一戦がキャリア一番のビッグマッチとなったことは言うまでもない。中谷有利の声に耳を傾けず、本人は一切の甘さを捨てて厳しい戦いを想定し、キャリア一番のトレーニングを積んできた。西田のボクシング、ハートの強さを認めたうえで上回ろうとした。


