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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
寺地拳四朗まさかの陥落「行き止まりの道を行ったり来たり…」なぜ陣営に“迷い”が生まれた? 敗戦後、トレーナーの胸を打った寺地の“ある言葉”
posted2025/08/13 17:03
判定結果がコールされた瞬間、うつむいて拍手を送る寺地拳四朗と喜びを爆発させるリカルド・サンドバル
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
参謀の迷い「行き止まりの道を行ったり来たり…」
寺地が5回にダウンを奪い、6回も優勢に進めて試合のペースを握ったかに見えた。雲行きが再び怪しくなったのは7回だ。サンドバルが立て直し、相手を引き付けてカウンターを狙い打つボクシングを再び機能させ始めたのだ。寺地はまたしても攻めあぐねた。挑戦者のシャープなパンチがコツコツと王者をとらえ、寺地はラウンドを失っていった。
「サンドバル陣営はやることが明確でした。足で揺さぶられたら後ろで待ってポジションだけ気を付けて右を狙う。相手が入ってきたらちょっと頭を振って接点、接点で必ず返してその場面を収める。そしてまた待つ。こっちはワンツーで揺さぶるんだけど相手は動いてくれない。タイミングを変えようとしても動かない。上下に散らしたりしてパンチを打ち込んでも、入り際を狙われる。そんな展開が続きました」
そしてブレない相手に対し、寺地はブレていく。当初のプランを変更して接近戦を仕掛けるが、「サンドバルはもともと接近戦が得意」なためにうまくいかない。出している手数は同じくらいでも印象的なヒットはサンドバルが上だ。寺地はしっかりブロックしてからのリターンが少なく「打ち負けている」という印象を与えた。
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思うような展開にできず、加藤トレーナーは「迷った」と告白する。
「距離を取ってもうまくいかない、接近戦もうまくいかない。行き止まりの道を行ったり来たりしているような感じでした。自分は相手の良さを消すという意味で足を使った方がいいと思った。だけど足を使っても見栄えが悪いと思って8回に『打ち合え』と指示を出しました。でも、打ち合って帰ってきた本人は『行くと跳ね返されます』。今度はまた足を使って、最後はポイントが危ないから行かせましたけど届きませんでした……」

