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「さすがに驚かせられたんじゃないかと」中谷潤人が語った西田凌佑との世界王座統一戦“激闘の真意”…空振りでニヤリも「自分のことが面白くなって…」
posted2025/08/20 11:05
WBC・IBF世界バンタム級統一王者となった中谷潤人が、西田凌佑との統一王座戦「激闘の舞台裏」を明かした
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
「さすがに驚かせられたんじゃないかと」
日本人世界王者による王座統一戦は4例目、そして無敗同士は初めてとなる。
30勝23KOのWBC世界バンタム級王者・中谷潤人は体をほぐしながら10勝2KOのIBF世界バンタム級王者・西田凌佑と対峙する。ゴングと同時に前にグッと歩を進める中谷がいきなり強振していく。
左フックから右アッパー、左アッパーから右フック。様々なコンビネーションで西田に襲い掛かる。急所にヒットしなくとも、ガードの上でもお構いなしだ。肩越しからの左オーバーハンドもあれば、連発する右アッパーはしつこく、体を伸ばすように。ペースを落とさず、西田に息つく暇を与えようとしない。解説席に座った村田諒太は「異常なまでにパワーで来ている」と評したが、その異様な光景は行き切るという中谷の覚悟が示されていた。
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中谷が振り返る。
「普段の自分は序盤(相手を)見ながら段々と上げていくタイプなので、西田選手側からしたら行くとしてもここまでの想定はしていなかったはず。ちょっと息が上がっていたように感じたし、その意味でもびっくりさせられたかな、と。(観客席からも)オオッという声が聞こえてきました。2ラウンドも行ったというところでさらに驚かせられたんじゃないかと思うんです」
12ラウンド全力でやるだけの体力はつけてきた。サプライズに対する西田や会場の反応が、「最後の最後まであった」不安をかき消していた。西田も下がらず、前に出て対抗しようとする。2ラウンド残り30秒、中谷は右アッパーのトリプルをパワー全開で2度見舞っている。こじ開けられなかったが、そのガード自体にダメージを与えていた。
「外を結構打っていたので、中がどうしても開いてくる。西田選手は普段、上体が立っているのでアッパーは当たらないと思っていたんですけど、前に来てくれて体勢も前傾になるので多用する形にはなりましたね。
(トレーナーの)ルディからどんどん体を、腕を打っていけ、という指示がありました。出そうと思って出していなかったのがこれまでで、対西田選手を考えたときにそういう戦い方は必要。手を出させなくするには腕を疲れさせなければならないので」
西田の反撃「凄く嫌なタイミングで打ってくる」
ここまでは中谷の目論見どおりであった。ジャッジの支持も集めた。しかし、このままで押し切れるとも思っていなかった。相手はIBFチャンピオンであり、中谷も認めるうまさがある。パワー全開で行く以上、どうしても大振りになれば被弾も覚悟しなければならなかった。


