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藤井聡太23歳は「桁違いの読みなのに不思議なのは」「まるでマシン」絶対王者に3連敗…杉本和陽33歳が激白「すぐ斬られるんじゃないかと」
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by日本将棋連盟
posted2025/08/10 11:00
棋聖戦で藤井聡太七冠と相まみえた杉本和陽六段。全3局の率直な心境を語りつくしてくれた
――第1局が近づくにつれて心境に変化はありましたか?
「挑戦が決まってから公式戦で負けが込んでしまったので、不安な気持ちはかなりありました。ワンサイドゲームになったらどうしよう、みたいな。客観的に見たら、藤井棋聖と実力にかなり差はあることはわかっていたので。ただ『いよいよ来たか』という楽しみな気持ちも2割くらいはありました」
――開幕戦は振り駒です。先手と後手のどちらが欲しかったですか?
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「私は五番勝負だと先手です。3局で終わった場合に、先手番が1局なのは寂しいので。後手振り飛車が来るとわかっていて準備された場合、かなり厳しいんです。なので先手振り飛車が多い方がありがたかった」
不思議なのは…藤井棋聖は桁違いの読みの速さなのに
――対局日の朝、和服を着て盤の前に座った時はどのような気持ちでしたか?
「緊張はなかったです。むしろ前夜祭の挨拶で緊張していたので、そこをなんとか凌いでからは解放感がありましたね(笑)。自分でも案外、落ち着いてるなと思いました」
――開幕戦は希望の先手番になり、得意戦法の三間飛車に構えました。
「先手なら三間飛車と決めていました。ただ玉の囲いは美濃囲いでは不安があって、もう少し堅いミレニアムにしました。藤井棋聖はあまり経験がないんじゃないかな、という思惑もありましたね。中盤で駒がぶつかった辺りで想定を外れたんですけど、自分は公式戦で何局か指している形だったので経験があったのも大きかった。これなら採用した甲斐はあったかな、と思いました」
――昼食休憩の時点で消費時間は藤井棋聖が1時間53分でしたが、杉本さんは40分しか使っていませんでした。
「そうですね。でも不思議なのは、藤井棋聖は桁違いの読みの速さがあるのに、中盤の何気ない局面に40分、50分も使われるんです。その結果、普通の手を指されることが多かった。何を考えているのかなって、ものすごく興味深かったですね。あらゆる可能性を読んで取捨選択をしているのでしょうか」
私の手は感想戦で藤井棋聖に全て…
――その後は時間差が詰まって終盤戦に突入しました。

