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「私は拳四朗の大ファンだが」英国人記者もショックの敗戦…ボクシング寺地拳四朗“まさかの王者陥落”はなぜ起きた?「最大の弱点が致命傷になった」
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/08/02 11:06
まさかの王者陥落となった寺地拳四朗(33歳)
一方、拳四朗は間違いなく全力を尽くして準備してきたと思うが、相手がアンダードッグだとどうしても集中を保つのが難しくなることがある。あの井上尚弥ですらも、格下相手には動きが違って見えることがあるのは日本のファンならご存じの通りだ。拳四朗も現実的にはこの先にあるWBO王者アンソニー・オラスクアガ、IBF王者・矢吹といった対抗王者との統一戦、あるいは1階級上の絶対王者であるジェシー・“バム”・ロドリゲスとのビッグファイトが頭にあったのではないか。
それは人間の自然な心の動きであり、“格下”と見られた選手との防衛戦で100%の集中は難しかったのかもしれない。だとすれば、前述通り、コンディション、戦力の面で問題がなかったにもかかわらず、戦い方に隙があったことも辻褄が合う。第5ラウンドに右パンチを決めて強烈なダウンを奪ったことも拳四朗にはむしろマイナスに働き、以降、一発を狙って手数が減るという流れになってしまった。
「最大の弱点が致命傷になった」
そして、これがおそらくは何よりも大きいが、拳四朗の最大の弱点である被弾の多さがここに来てついに致命傷になった印象がある。屈指のオールラウンダーである拳四朗だが、打たれやすさだけがずっと課題として残ってきた。相手が反撃してくる時、パンチをまともに食らってしまう。そのせいで、ジャッジが相手にポイントを与える展開になりやすい。この不完全さは拳四朗の魅力でもあり、おかげで多くの好試合の主役になってきた。前戦のユーリ阿久井政悟とのWBA、WBC統一戦もそうだったし、昨年1月のカルロス・カニサレス戦でも被弾傾向は見られた。
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阿久井戦は最終回の劇的な逆転KO、カニサレス戦も僅差の判定で勝ち抜いたが、それらは実に危険な試合だった。サンドバル戦ではついにその点が災いし、今年度最大級のアップセットでの勝利を相手に献上する結果になったのだろう。
今後、拳四朗がどうするのかは今の時点ではわからない。私は現役続行を予想するが、まだ戦い続けるのであればやはりディフェンス改善は必須だろう。33歳という年齢的にそれが可能かはわからないが、また頂点に返り咲きたいのであれば、打たれるリスクを減らす必要があることは間違いないと思う。〈後編に続く〉


