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プロ野球PRESSBACK NUMBER
“最強助っ人”バースがシーズン途中にまさかの「解雇通告」いったいなぜ? 阪神お家騒動が迎えた“悲劇的な結末”「バースは悲しげに口をつぐみ…」
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内匠宏幸Hiroyuki Takumi
photograph bySankei Shimbun
posted2025/08/01 11:13
1988年シーズン途中に阪神を退団したランディ・バース。球団の英雄はなぜ解雇を通告されたのか
何度も交渉したものの、解決の糸口が見いだせないまま時は過ぎ、ついに球団は期限を設定。バースはこれに納得しないまま、ついに「解雇通告」となったのである。
さらに問題は続いた。バース問題がこじれたうえに、掛布が監督の村山に反発。引退報道が出る事態に至ってしまった。
もはや野球どころではない状況に世間は「阪神お家騒動」と揶揄したが、騒動はついに悲劇的な結末を迎えてしまう。新任の球団代表、古谷真吾は生真面目で実直な人物だった。バース問題、掛布問題で心労が重なり、7月、出張先の東京のホテルの8階から飛び降りて死亡した。7月19日未明のことであった。
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「紳士的に話ができたし、好感の持てる人だった」。後年、バースは古谷のことを偲び、こうつぶやいていたが、やはりこの件に関して多くは語りたくないのだろう。悲しげに口をつぐむ姿が印象的だった。
日本を愛し、ファンに愛された「最強の外国人選手」
退団して以降、バースと阪神球団との溝は長く埋まらなかったが、近年になってようやく雪解けを迎えた。昨今はイベントがあれば来日し、掛布、岡田らと旧交を温め、オールドファンに懐かしさを与えている。
在籍6年で614試合に出場。202本塁打、486打点、通算打率は.337。期間こそ長くはないものの、球史に残る2度の三冠王を獲得した実績は、まさに来日外国人打者のナンバーワンだろう。ここまでのし上がった背景には、類まれな探求心と日本の文化への絶妙なアプローチがあった。バースが日本をこよなく愛したことをファンは知っているし、同じように、いまなおファンはバースを愛している。
今年は阪神の4番、佐藤輝明がホームランレースを独走している。このままタイトルを取れば、阪神の本塁打王は39年ぶりとなる。そう、1986年のバース以来――長い長い空白が、ようやく埋まりそうである。
<前編とあわせてお読みください>

