死んだ父が残した借金30億円完済も「酒に逃げた…」“このままじゃ確実に死ぬ”と診断された金平桂一郎を救った亀田興毅という宝物 

「海老原博幸さんとの出会いでジムの礎が生まれ、具志堅用高さんのおかげでお金が入り贅沢が出来るようになった。そして、鬼塚君の存在がジムを復活させたわけです。その後、鬼塚君に憧れて協栄ジムの門戸を叩く子が増えた。鬼塚君は出会った時から、全てが違った。スパーリングでも日本ランカークラスをコロコロ倒していましたから。何よりボクサーとしての“華”があった。これは金の卵だ、とすぐに確信しましたよ」

　父はボクサーと二人三脚で動く人でもあった。金平は、そんな父を反面教師とした面もある。金平にとって、鬼塚の存在は、ボクサーと一定の距離感を置く契機にもなったという。

鬼塚勝也　©︎Naoya Sanuki

「鬼塚君には申し訳なかったという気持ちもある。本来の彼は朗らかで、モノマネ好きな明るい性格。ですが、マスコミの影響もあり、次第に心を閉ざしクールなキャラクターを演じるようになっていった。計り知れない重圧もあったなか、私に出来ることはなかったのか、と。結局、私も単なるボクシング好きですから、特別な才能との邂逅が一番の喜びであり、そこに甘えてしまった。引退後久しぶりに会った時は、明るく陽気な性格に戻ってホッとしましね」

借金30億円を完済…世界王者も誕生

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　依然として重くのしかかる莫大な借金――そこで金平が目をつけたのは女性向けのフィットネスの解禁だった。そして、ダイエット目的の健康食品・器具の販売にまで手を広げた。

　父がボクシング界から遠ざけようとした息子は、商才には恵まれていた。年々借金を減らしていき、10年間で24億円を返済し、その後に完済する。そして、佐藤修、坂田健史という世界王者を“作る”ことに腐心するようになっていく。

「ボクシングの世界王者は“出てくる”ものではなく、“作る”ものです。才能がある選手に、相応の機会を与え続ける。大手ジムにはそのノウハウがあるわけです。そして、父から受け継いた協栄ジムにもその術がありました」

2002年5月、WBAスーパーバンタム級タイトル戦の調印式に出席した挑戦者・佐藤修（左）と金平会長　©︎JIJI PRESS

　金平にとって、おそらくこの頃がジムの会長としての責務を果たし、最もやりがいを感じていた時期だった。2002年に佐藤がWBAのスーパーバンタム級の王座を獲得する。会長就任後に育てた初の世界王者でもあった。

　だが、世界戦の興行となると数千万円という莫大な費用が必要となる。利益もほとんど出なかったこともあるが、常に金に追われ続けた金平はストレスから、次第に酒に逃げ始めるようになっていく。

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