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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「育成枠で信用できるの、ソフトバンクだけ」…高校野球の逸材がなぜ続々“プロ回避”? スカウトの胸中は「現代なら…育成でもプロ入りするべき」
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2025/07/30 11:08
「高卒育成の星」として例に挙がることが多い千賀滉大(ソフトバンク→メッツ)。一方で、こうしたケースは“奇跡”とも言われることが多かった
ではなぜ、有力選手たちはこぞって「高卒プロ」の道を選ばなかったのか。
「プロだって、よくないんですよ」
ある有名大学の監督さんが、こんなことを言っていた。この方は明らかに怒っていた。
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「ふたこと目には、育成、育成って。高校生を安く買い叩こうって魂胆、丸見えじゃないですか」
こんな例があったという。
「練習参加に来たピッチャーが素晴らしいボールを投げる。ウチなら、どんなピッチャーでも1年間は体力強化だから、大学2年生の春からローテーションのレベル。『これならプロが黙ってないでしょ?』って訊いたら、(そのピッチャーの高校の)監督さんが『それがスカウトみんな、育成、育成って申し合わせたみたいに』と嘆いているんです」
高校野球の監督さん仲間に訊いても「上位指名じゃないんですか?」という反応ばかりだったという。
「会社から言われている球団もあるらしいんですよ、最初は『育成で……』から話を進めろみたいな」
そんなことしていたら、プロが信用なくすんじゃないですか?
「だから進学希望が増えているんじゃないですか。ウチもそうだけどヨソの大学も、推薦枠がオーバーしちゃって困るほど、志望者来ているみたいですから」
高校からプロ入りなら、おおむね育成枠。大学に進学すれば、4年後は支配下上位か1位指名まで……それが現実。
そう解釈されてしまっては、「プロ」を尻込みする高校球児が増えているのもわからないでもない。
「育成枠で信用できるの、ソフトバンクだけ」?
「プロ志望の高校生の発言で『育成でもプロ!』とか、『支配下指名にこだわりたい!』とか、今年なんかすごく多いじゃないですか。ウチの学生なんかも、一応全員プロ志望なんですけど(笑)、『育成枠で信用できるのって、ソフトバンクだけじゃないですか』って、結構ちゃんと勉強しているみたいなんですよ、ああ見えて」
メジャーリーグの見習うべきは導入して、確かな育成システムと設備を構築し、三軍、四軍運営の意義を書籍化までして、「育成」の現実を発信するソフトバンクという球団のあり方は、アマチュア球界にも浸透しつつあるようだ。

