「育成枠で信用できるの、ソフトバンクだけ」…高校野球の逸材がなぜ続々“プロ回避”？ スカウトの胸中は「現代なら…育成でもプロ入りするべき」 

「そうなんですよ、私自身、何年か前までは、育成で（プロに）入るなら、進学できる子は進学したほうがいいと思っていましたよ、内心」

　一人の現職スカウト（※但しソフトバンク以外の球団）の発言が、とても興味深く聞こえた。

「育成入団の成功例が奇跡みたいなニュアンスで報じられて、その一方で大学進学した選手たちが順調に成長してドラフト1位や上位で次々プロ入りしていく。そういう現象が何年も続いていましたから、当然といえば、当然なんですけどね。高校の監督さんから相談されて、進学を勧めたことも何度もありました。でも、今はぜんぜん違います」

「育成の星」として例に挙がることが多い千賀滉大。2010年のドラフト指名後、三軍からのスタートだった　©Hideki Sugiyama

スカウトの本音…今は「育成でもプロ入りするべき」

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　このへんから、語調のアップ成分が一気に上がった。

「選手たちのパフォーマンス……つまり、すべてのプレーについて数値化して可視化できるシステムが確立していて、一軍戦力になるまでの課題と達成プログラムが、短期、中期、長期に分けて明確にできる」

　これは、アマチュア選手を対象にしても活用できるという。

「それに、ハードの部分……つまり設備。トレーニング設備に練習施設、それに関わる人的な配置。つまり、トレーナーさんや理学療法士さんたち。トレーニングと食事からの栄養摂取で強い体を作って、野球の練習で技術を身につけて、同時に、そういうことの知識も学べるから、かなりの程度、自己管理もできる」

　ここ数年、プロ球界が飛躍的にブラッシュアップした部分だそうだ。

「だから今だったら間違いなく、育成でもプロ入りするべきだと言いきれますね。特に、野球センスと身体能力は抜群なのに、体格と体力不足が心配……みたいなタイプ。体作りからっていうタイプこそ、今のプロの育成プログラムに乗っかったらいい。

　但し……但しですよ、ここが肝心なところなんですけど、自分には今、どんな練習が必要なのか、それは何のための練習なのか、そこに興味を持てるヤツじゃないといけない。いくら立派なプログラムがあっても、上向いて、口開けて、雨が降ってくるのを待っているだけみたいなヤツじゃ、ダメなんです」