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相撲界を辞めて、なぜ美容界に? 元小結・阿武咲が異例の転身「もともと肌が弱く、生傷が絶えなくて…」運命を変えた休日のドッグラン
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph byHirofumi Kamaya
posted2025/07/30 11:02
角界を離れ、スキンケア商品を扱う会社に入社した元小結・阿武咲
現在は千葉県内の自宅から勤務先の横浜まで約70キロを車で通勤する毎日だ。力士時代は自動車の運転は禁止だったが、引退後免許を取得し、今は自らハンドルを握る。
「もともと運転が好きだということもありますけど、一人になれるのはその時くらいなので、その時間は大切にしていますね。行きの車中では“今日は〇〇をしないといけないな”と考えていますね。逆に帰りはその日あったことを振り返ったり頭の中を整理して、家のドアを開けた瞬間にパパに戻ります」
急な商談やトラブルがあっても対応できるように、車の中には着替えなども常時完備。「車の中が家のようになってます」と笑う。
「社会の厳しさを教えてもらっている」
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広報や開発、販売イベントまで、新弟子時代のように「一から覚えている」社会人生活。ときには戸惑うこともあるが、何事も経験だと思い前向きに捉え、挑んでいる。
「営業や商談で使うような用語にも“何それ?”ってなることもあるし、力士時代は字を書くことも計算することもほとんどないような環境でした。だから今は社会の厳しさを教えられているという感じですね(笑)」
ただ分からないことだらけでも、「できない」という言葉では片づけない。いいものを届けるためにも己に負けない。
「自分が決めたことは途中で投げ出さずやり通す。やってみないと分からないですから。まずはやってみよう、常にそういう気持ちで向かっています」
激しい突き、押しを得意とした取り口のように、まったく異なるフィールドを選んだ第二の人生でも、一直線で未来を切り開こうとしている。
マゲを切った今も打越さんがブレない自分であり続けられる理由は何なのか。そこには23年間の濃密な相撲人生があった。
〈第2回に続く〉


