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相撲界を辞めて、なぜ美容界に? 元小結・阿武咲が異例の転身「もともと肌が弱く、生傷が絶えなくて…」運命を変えた休日のドッグラン
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph byHirofumi Kamaya
posted2025/07/30 11:02
角界を離れ、スキンケア商品を扱う会社に入社した元小結・阿武咲
そもそも、打越さんが馬油の魅力に触れたのは、阿武咲の四股名で活躍していた現役時代にさかのぼる。
「肌が弱いこともあって現役のときからスキンケアなどにはすごく興味は持っていました」
転機になったのは、「横濱馬油商店」を運営する株式会社ディアラの社長・寺内崇氏との出会いだった。同社は馬肉の加工時に大量に廃棄していた油を有効活用できないかと考え、馬油を原料としたスキンケアブランドを10年前に誕生させた。
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「最初はドッグランでお会いして交流がはじまったんです。そこで犬のことや馬に関する知識をいろいろ教えていただいて。自分はもともと肌が弱くて、生傷が絶えない現役時代に何を使っても肌に合わずに悩んでいたんですが、馬油を使うようになって本当に調子がよくなりました。子どもたちも肌が弱くて皮膚科に頻繁に通っていたんですが、馬油のクリームやせっけんを使ってみると、それまで市販の商品を試してもまったく合わなかったのに薬知らずの肌になったんです。
自分は寿司屋の孫。小さい頃から肉を食べる習慣がなくて脂っこいものがダメで、(肉を)食べるとよくお腹を壊していました。でも馬肉だけは大丈夫。愛犬も馬肉ですごく体が引き締まりましたし、以前は1〜2週間に一度、動物病院通いをしていましたが、それもなくなりましたね」
家族に勧めた馬油のチカラ
現役中は「馬ありきのわが家でした」と話すほど、自身はもちろん、家族、そしてペットと一家全員で馬のお世話になっていたと感謝する。そういった経験が「もっと馬油のことを知りたいと思うようになったんです」と打越さんの探求心をくすぐった。
古くから火傷や切り傷といったトラブル肌をケアする自然由来の万能油として重宝されてきた馬油と、長年自身が生きてきた相撲の世界はどちらも日本の伝統文化。打越さんはその親和性にやりがいも感じ、「自分の相撲のスタイルのように、まっすぐにぶつかれるような気がした」と同社への入社を決意した。


