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甲子園の風BACK NUMBER
「私学の壁を超えたい」兵庫の“偏差値70超”公立校が本気で目指した甲子園の結末は?…ベスト4にも指揮官の本音「『公立だからスゴい』では悔しい」
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沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2025/07/28 11:01
クラスによっては偏差値70を超える兵庫の公立進学校である小野高校。それでも北垣賢高監督は「私学の壁を越えたい」と本気で甲子園を目指した
それでもこの夏、5度も校歌を歌った。県を勝ち切って甲子園へ――という指揮官の思いに応え、3年間、朝練さらには放課後も続く連日の練習にもついてきた。それでも「夏に勝つことを考えたらしんどい練習も乗り越えていかないといけないと、みんなで言い合いながらやってきました」と丹野は胸を張る。
これからは中学3年生の時から志している獣医の夢を叶えるため、国公立大合格を目指し猛勉強に切り替える。野球で培った忍耐力は、きっと生きるはずだ。
「公立校だから良くやった」では正直、悔しい
颯爽と駆け抜けた6試合。指揮官にとってはどんな6試合だったのか。だが、やや眼力を強めて北垣監督はこう本音を漏らす。
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「『公立校だからベスト4は良くやったよね』とか『進学校はここまで来たら十分やろ』と言われるのは正直悔しいんです。本気で甲子園を目指していたので。でもこの夏の6試合は勝つたびに生徒が目に見えて成長していったんです。
春に三木に負けた時はオドオドした表情を見せていたのに、今日は力の差がある相手に堂々と立ち向かっていってくれました。準決勝でこんな試合になってしまいましたけれど、僕はこの子たちを誇りに思っています」
小野ナインの107回の夏は終わった。だが、来年も再来年も夏はやってくる。
この夏に残した足跡、そして熱戦の余韻は決して無駄にはならない。

