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田嶋大樹「1人が好き…人と関わると自分が傷つく」孤高の左腕を変えた「結婚の幸せ」とオリックスの“父親ローテ”秘話「それはもう妻のおかげです」
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/07/26 11:03
サヨナラホームランを放った中川に抱きついて祝福する田嶋
田嶋を支えた“父親ローテ”の気遣い
出産に至るまでの球団のサポートも大きかったと田嶋は感謝する。
「いつ産まれてもいいように、なるべく大阪で投げられるようにと配慮していただきました」
出産予定日の数週間前から、田嶋は登板翌日に登録を抹消され、結果的に中10日で回った。ビジターの試合には帯同せずホームで投げられるように、いつ出産のタイミングが来ても立ち会えるようにという球団の配慮だった。
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厚澤和幸投手コーチはこう明かす。
「できる時は奥さんのほうについていてあげて、という話をして、ビジターには行かさず、あえてそういうローテを組みました。初めてのことだし、(第一子誕生は)一生に一度のことなので。産まれてからも、急いで戻ってくるというわけじゃなく、奥さんのほうのリズムというか、そういうものができてからということで、産まれた瞬間も次の登板日は決まっていませんでした。予定日はあくまでも予定日なので。
プライベートも仕事も、しっかり両立させてあげたいなと。タジも奥さんのことを気にかけていたから、なおさら。メジャーには産休があるんでしょ? やっぱり今の時代に合った仕事のしかたがあると思うので、やれることはやってあげたいなと思って」
「オリックスに貢献したい」感謝と覚悟
田嶋だけでなく、今後は他の投手に対しても同じような提案や配慮をするつもりだという。
「そうすることによって、意気に感じてマウンドに上がってくれたらさらにいいことだし。ピッチャーってメンタルの部分がすごく大きいんです。マウンドは、どういうモチベーションで上がるかによって、結構なエネルギーが生まれる場所だと思っています。だから少しでもバッターや試合に集中できる環境を作ってあげたい」
まっすぐな田嶋が心を動かされないわけがない。
「本当にありがたいサポートをしていただいたので、それでまた、よりオリックスに貢献したい、オリックスのために頑張りたいなというふうに思えました」
その田嶋は、後半戦の開幕投手を任された。家族への思いと覚悟、チームへの感謝を胸に、後半戦、左腕の放つボールはさらに鋭さを増すだろう。


